「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」いわゆる「DV防止法」が制定されて3年が経ち、今年5月に法改正がありました。この法律によって、DV(ドメスティック・バイオレンスの略)は配偶者に対する人権侵害であり、犯罪であることが明確にされましたが、DVの被害状況は顕在化してきたものの、市民の認識はまだまだ低い状況にあるのではないでしょうか。
加害者の多くは男性ですが、「暴力は妻のしつけ」と暴力を合理化する傾向にあり、自分が罪を犯しているという意識がないことが問題のひとつです。これまで被害者対策に比べて加害者対策はほとんど行なわれておらず、今回の改正にも罰則規定が盛り込まれてはいません。これでは「DVは犯罪」であることがなかなか定着しないのではないかと思います。
DV家庭の子どもたちの問題も深刻です。親の暴力を日常的に目撃する子どもの心理的・精神的影響はきわめて大きく、さらにDV家庭の5割では子どもにも暴力が及んでいます。今回新たに元配偶者とともに子どもも保護対象となりましたが、暴力の中で育つことは、将来暴力の加害者になってしまう懸念もあります。最近の報告では、交際中の若い男女の間でもDVが目立ってきているといいます。
イギリスのDV対策は、もはや加害者・被害者に特化して対策を立てることよりも、社会全体で未然防止策を講じることの方に力点が置かれてきています。今回の改正では、国と同時に地方公共団体にも被害者の保護及び自立支援のための責務が明記されることになります。DVを特別な家庭の問題にするのではなく、地域の日常の中で起きている問題ととらえる必要があります。被害者の一時保護施設の整備、住宅や就労支援はもちろんのこと、子どもたちが成長する過程では、DVの加害者にも被害者にもならない教育プログラムの実践も大切なことではないでしょうか。
DVはなぜ起きるのでしょう。それは、日本では21世紀の今なお人権や男女平等意識が乏しく、さまざまな場面で女性や子どもなどが軽視されているからに他なりません。自治体として人権意識の向上や男女平等への積極的な取り組みこそが求められると思います。