「在宅医療」に山積する課題

「熟年者支援特別委員会」報告

→区内に1ヶ所の地域密着型介護老人福祉施設「特別養護老人ホーム わとなーる」を視察。「輪」となって「和」となる、が施設名の由来。ユニットケアにより、個人を最大限に尊重しつつ、地域での生活を24時間支える体制のため、重度の利用者が多い。デイサービス、居宅介護支援事業、4つの医療機関との連携も。ケアワークの状況はやはり厳しい。(昨年12月)

私が委員長を務めている「熟年者支援特別委員会」では、17日、「在宅医療の充実」をテーマに委員会を開きました。この分野は医療と福祉の連携であり、医療制度改革の中でも「在宅を重視した医療」が体系の柱になっているなど、その重要性は認識されながらもまだまだ途上段階にあります。
区内には現在16箇所の訪問看護ステーションがありますが、7箇所の所長さんがお集まりくださり、最前線で重要任務を果たされている立場から、在宅医療の現状と課題について率直なお話を伺うことができました。

在宅医療を必要としている方は、赤ちゃんから高齢者まで、疾患は神経難病や脳血管疾患、癌末期などありとあらゆる疾患。となれば、訪問看護に携わるには、広範囲な知識や豊富な経験、そしてドクターなみの判断力が必要になります。訪問は一人のため、常に緊張を強いられ、重い責任を負いますが、その割には報酬が低く、休みをとりにくいなど、人員確保が難しいというのが状況です。また、駐車禁止除外許可がとりにくいために、自転車での移動が多くなり、そのため、訪問範囲が限られてしまう、という現状もあります。

最近は、医療依存度の高い方が退院し、在宅療養になるケースが増えています。しかし、こうした方のショートステイやデイサービスの場はなく、介護者がレスパイトできない、また、介護者も高齢者のことが多く、医療行為ができない、などの課題があります。他にも、ケアマネージャーの医療知識が十分でない場合があり、訪問看護の利用が適切にプランに組み込まれない、経済的理由で在宅の医療材料の負担やサービスそのものが利用できないということも。
在宅医療の要である往診医を探すことも難しいとのこと。区内には、現在、在宅療養支援診療所が30箇所あります。24時間体制で医師または看護職員を配置し、患者からの連絡を一元的に受け、患者への診療情報を集約するなど、在宅医療の中心的役割を担う機関として期待されています。しかし、絶対数が少ないことに加え、特に夜間には連絡がとりにくい実状もあるといいます。

在宅医療は、単なる医療行為ということではなく、その方の暮らし全体をみる、また、家族の悩みなどにも対応していくなど、住み慣れた地域で暮らし続けるためのトータルな取り組みが必要になります。療養者や家族に寄り添うことのできる医師や看護師の養成、リハビリを目的としたデイサービス施設、介護者のレスパイトにつながるサービス、そしてサービス提供者の環境整備も含め、地域に根ざしたコミュニティケアの構築を着実に推進していかなければなりません。