もう一本は、第16号「『廃プラ焼却中止または無期延期と、区民の健康および経済負担を最優先にしたリ、区民が策定するごみ処理計画』についての陳情」。
原文には数々のデータも盛り込まれて、内容も多岐にわたり、環境問題に真摯に取り組んでいる陳情者の姿勢がよく伝わってくるものでした。「ゼロウェイスト」という今日的な考え方に則っていることが特徴的。これは、ごみだけにとどまらず、浪費や無駄をなくそうという、やはりライフスタイルの見直しが大事ということにつながる考えです。
日本では国土が狭いことや、衛生の観点から焼却中心のごみ処理をしてきていますが、前回もお伝えしたとおり、安易な焼却は人のライフスタイルの転換やごみの原因となる製品のライフサイクルの見直しにつながらないという問題点も抱えています。そうした中で、ごみ処理のための無駄なエネルギーや経済負担を見極め、可能な限りの再使用や再利用をして焼却をゼロにしていこうという考え方はまさに今、私たちに求められていることです。
安全性の確認や拡大生産者責任の確立は第3号陳情と同じで当然求めていくべきことことですが、この16号では、さらに清掃工場運営協議会の立ち上げ、23区清掃一部事務組合の新たな責務を求めています。運営協議会については、現在23区にある工場で、設置されていないのは実は江戸川だけ。行政は「運協がないのは(安全性に問題がなく)誇れること」と言いますが、サーマルリサイクルやアウトソーシングの開始など、事業が高度化、複雑化する中では、直接十分な説明を受けたり議論のできる場の必要性は高まってくると考えます。現在地元町会に会がありますが、地元民だけでなく、広く区民全体に開かれた場として立ち上げる検討はすべきです。
また、一部事務組合に関する指摘について、ごみを減らして工場をなくすべきという主張は、私も一般質問で同じ考えを述べました。一組は焼却だけを粛々と行なうのではなく、サーマルの実施に伴い、中央防波堤の不燃ごみ処理センターがひとつ閉鎖されることから、そこに中間処理施設をつくって多くの区が資源化できるようにするなど、23区を後押しする視野も持つべきと考えます。一組のオーナーである23区側の13区が、資源化に踏み切れないでいる現状について、一組はもちろんのこと、サーマルの方向性を国に先んじて示し、来年度の予算概要にも廃棄物対策を柱に入れている東京都もまた、何らかの方策を講じる必要があるのではないかと思っています。そうでないと肝入りの「カーボンマイナス東京10年プロジェクト」もかなわないのでは?
次世代に負の遺産を残さない、また持続可能な循環型社会の実現に向けて、陳情の目指すべき方向性は妥当と考えますが、「何の実証確認もしていない」など、事実と異なる部分があったこと、また4月にはすでに10区(江戸川・新宿・杉並・葛飾・中央・大田・北・荒川・足立・板橋*)がサーマルの全区展開を実施することから、直近における陳情の実現性も鑑み、趣旨採択としました。
(青字の区は資源化実施区、板橋は一部実施)