先月のことになりますが、東京都及び江戸川区の環境政策立案のため、7月17日から18日、環境先進自治体である福岡県北九州市・同築上郡築上町・佐賀県を訪問しました。
初日は北九州。「全世帯太陽光発電付きマンション」(民間)視察に始まり、北九州市役所にて「北九州市地球温暖化対策地域推進計画」のヒアリング、次に北九州市エコタウンセンターにて「北九州エコタウン事業」のヒアリング、そのエコタウンの総合環境コンビナートにある「家電リサイクル事業」と響リサイクル団地にある「食用油リサイクル事業」を視察。一日で5箇所を回りました。
第一弾のご報告は、2005年、経済産業省の「省エネ大賞」も受賞している「全世帯太陽光発電付き賃貸マンション『ニューガイア』」です。
集合住宅の太陽光発電システムというと、これまでは共用部分に電力を供給することがほとんどでしたが、ここは、各住戸での利用を実現させた日本初の事例。屋上に美観を兼ねた約65kW、1114枚の太陽光パネルを設置、43の全住戸に1.5kWずつ、一戸あたり10枚のパネルが割り当てられるほか、大気の熱でお湯を沸かす省エネ給湯器エコキュートやIHクッキングヒーターも標準整備。全世帯オール電化となっています。
入居者は初期投資や維持・修理費を負担することなく、クリーンな電力を利用でき、さらに、余剰電力を1kW25円で電力会社が買い取るしくみになっているため、光熱費8割削減というライフスタイルを実現。結果、年間3707本分の杉の木の吸収に相当するCO2削減を達成しています。自宅の光熱費が賄える上に、余剰電力の売電により、月5000円ほどのプラス収入になっている家庭も。このメリットにより、家賃は相場より1割高いものの、3年間で建てた6棟は入居率100%、7棟目が来年竣工されるほどの人気ぶりです。
このマンションの発案及び施工者は「芝浦特機(株)」という設備会社。仕事がら、シンクや空調など内部設備について非常に安く設置できることが大きな強み。社長はじめ役員も居住者となって、企画どおりの快適な住まい方が実現されているかどうか、チェック機能も働かせています。
それにしても、地球温暖化対策や新エネルギーに関心が高まる時代のニーズをいちはやくつかんだところはあっぱれ。社長自らが案内・説明してくださいましたが、事業への熱い思いがひしひしと伝わってきました。設備会社としてのノウハウを最大限活かしたこと、エコロジーとエコノミー意識に訴えるPR戦略を丁寧に展開したことなどが奏功したと感じました。
九州に比べ土地が狭く、日照も短い東京ではもうひとつ工夫が必要か。しかし、所有者・利用者双方にメリットをもたらす新エネルギービジネスモデルとしての可能性は大です。
↓(左)室内で発電量をチェック。(右)売電メータが左、買電メータが右。各戸に付けられている。