北小岩の計画エリアはこれまでになく広いものとなっていますが、区はまず、北小岩1丁目東部地区から事業化したい意向で、すでに土地の先行買収をすすめています。しかし、納得していない方々もいまだ多いのが現状で、国が1月中旬に地盤調査及び測量のために現地入りしたものの、住民の反対にあい、中止になった経緯があります。(委員会では、2月1日の地権者説明会の席で調査への合意が得られたとの説明あり。)
事業化されていない土地の先行買収には大きな問題があると考えているので、先行買収の法的根拠と租税特別措置について、また、先行買収による区と区民のメリット・デメリットについて質問しました。
法的根拠については、これまで「公有地の拡大の推進に関する法律」によるという説明がなされてきました。これは確かに自治体がまちづくりに必要な土地を先に買うことができる法律であり、住民側は1500万円の税制優遇措置が受けられます。しかし、50㎡以上という面積要件があり、どんな場合でもというわけにはいきません。私は現在、区の財産価格審議会の委員もしており、事業化されていない土地を買うにあたっての価格審査もする立場です。昨年12月の審議会には、面積要件に満たない土地が議案として出され、それについての根拠を質問したのですが、納得のいく説明が得られず、その議案には賛成しませんでした。
事業認可がおりている場合なら、区は都市計画法67条によって取得でき、住民側は租税特別措置法33条の4に基づき、土地収用法による5000万円の税制優遇措置が受けられます。しかし①事業計画もない場合②事業計画決定はされているものの認可がおりていない場合、の買収については、私も関係部署に何度かヒアリングしましたが、聞く相手方によって説明が違うこともあり、委員会として共通認識を持つべき重要なポイントであることから、改めて質しました。が、答弁は得られず、次回に持ち越しとなりました。部課長はじめ担当職員が揃っている中で、すでに行っていることについて答弁できないこと自体大きな問題です。
また、先行買収は区民の財産権を左右することにもなりかねない、ということも区は考え置かなければなりません。事業計画もなく、反対の意見表明も多くある中で、区が先行買収を行うことで、そこにまちづくり用地の看板が立つなどすると、事業は避けられないもの、というイメージが定着します。家の建て替えをしたいと考えていてもそれが困難になり、自由な売買もなくなり、土地の値段も下がるという事態を招くのではないでしょうか。区の行動が区民の財産権を侵害するようなことがあってはなりません。
どっちつかずの不安定な状態に住民のストレスは否応なく高まり、近所の様子をお互い必要以上に気にするなど、コミュニティの状態が悪化していくことも懸念されます。
暮らしの中で考える安心・安全とは、200年に一度の自然災害にも耐えうる公共事業を完成させることでしょうか。私たち生活者ネットが反対運動に参加している「八ツ場ダム」の計画地の方々からお聞きした話が忘れられません。「私たちはこの50年間ずっと災害にあっているようなものだ」と。昨年秋に景観をテーマに委員会で視察した尾道市は、まちの姿を現状維持することを最優先にしました。暮らしの中の安心とは、平穏な今の生活を続けていくこと、ということもできると思うのです。
スーパー堤防事業は、大規模な土木工事をつくるために考案されたのではないか、土の堤防である以上万全とは言えない、という専門家の指摘もあります。完成時期や効果が計れないものに多額の税金を投入することへの批判も。
昨年、江戸川区で開催されたゼロメーターサミットでも「施設の安全性を決定するのは自然だ」「堤防強化はきわめて短時間で行なうことが課題だ」という海外都市からの発表もありました。これらはそのまま区の課題でもあり、区が今準備中の景観計画策定に向けたワークショップなども活かしつつ、住民とともに考えていくべきことです。