スーパー堤防とフロンティア堤防

その工法は確立されている?

→昭和40年からの改修工事でつくられた頑丈な北小岩の堤防。 

技術立国・日本。水害に悩まされてきた日本では、その技術力は治水面、堤防強化においてもいかんなく発揮されてきました。区が「スーパー堤防」予定地としている江戸川沿川・北小岩における昭和の堤防改修では、堤防の高さを2倍にし、さらに連接ブロックを埋め込むなどの工法をとり、当時の建設省は「関東大震災級の地震が起きても崩落しない」と住民に説明、現在もその頑丈な堤防が住民を守っています。
 
  また、今年4月、国土交通省港湾局が「東京湾の大規模高潮浸水想定」を発表しましたが、江戸川区は、「全水門開放及びゼロメートル地帯で破堤・室戸台風級、温暖化による水位上昇を考慮」した最大規模レベル6の状況になっても「浸水しない」と示されています。最大浸水面積は27630haに及び、江東区や浦安市など、東京湾沿岸自治体がどこも浸水する中、江戸川区は被害に遭わないとは何とも意外な想定結果です。国交省担当課に問い合せたところ「沿岸部からの越流を想定しており、河川は考慮していない」と縦割り行政お決まりのお答え。しかし、これも葛西臨海公園の高潮防潮堤がすでに区を十分に守りうることの証左ではあります。

 江戸川区が国とすすめようとしている「スーパー堤防」については、このサイトでも、また江戸川・生活者ネットワークの「それゆけ!レポート」でも現状をお伝えすると同時に問題点なども浮き彫りにしてきました。

  「スーパー堤防」と同様の目的で行なわれている事業に「フロンティア堤防」があります。①堤防内に水が浸透しないよう表面を遮水シートなど浸透しにくい材料で覆う②堤防内に浸透した水を排水しやすくする③堤防斜面を緩くする、などが特長です。関係機関によると「モデル事業として一部ですすめたが技術的に確立されておらず、今後の予定はない」とのことですが、信濃川や那珂川、雲出川、筑後川で行なわれており、筑後川河川事務所に問い合せたところ「平成8年から5年かけて1.1km行なった」が「問題点などはない。今後のことは聞いていない」とのこと。「スーパー堤防」といえども、5年前、荒川沿川の北区において盛り土表面のひび割れから雨水が浸透して一部崩落し、下の道路を塞いでしまうという事態になっています。こちらは「技術的に確立されていない」とはならないのでしょうか。

  現状の堤防幅を基本とし、越水しても急激に破堤しない「フロンティア堤防」の構造は、まちの姿を大きく変えることもなく、また、住民の負担も少ないものです。明確な理由もないままにお蔵入りにするのではなく、事業推進にはハードルが高すぎてなかなかすすまない「スーパー堤防」を思えば、「フロンティア堤防」による堤防強化をすすめていくことが現実的な適応策ではないかと考えます。