図書館サービスよ、どこへ行く?②

足立区の事例から・文京区のつどいにて

文京区の集会では、2年前から図書館への指定管理者制度を導入した足立区の事例も報告されましたが、実に驚くべき内容でした。

昨年、問題が噴出した東京都の認証保育所の運営が、保育とはおよそ縁遠い不動産業者やパチンコ店経営者などによって行なわれているケースがあることをお伝えしましたが、足立区の図書館もしかり。地元業者優先の考えから、自動車電気装置などを扱う企業が図書館の指定管理者になっているのです。

区に提出した提案書は、高度なレファレンス機能や、学校との連携による学力向上など立派な中身でしたが、その実態は安上がり運営そのもの。資格さえ持っていれば安く使えるほうがいいとの考えから、新卒者が副館長に。

最も驚くべきは、事業者から5年間の有期雇用を約束されていた館長が指定1年目で解雇される憂き目にあったことです。この館長は、提案書の内容を自身の使命ととらえ、これを実行すべく、スタッフとともに残業も辞さず精力的に取り組んでいました。このときの運営状況を、区の所管課は「(指定管理者に)期待している水準に達していた」と議会答弁しています。実際、貸出冊数を大きく増やし、図書館だよりによって地域への広報に努め、小中学校との連携強化をはじめ、図書館事業の集客は大きく伸びたのです。

ではなぜ館長はクビになったのか。それは、残業をしたため。
件の図書館が指定管理に移行したとき、事業者はスタッフの労働時間を大幅に削減。さらに、週30時間勤務で月額22万円だったスタッフ報酬を、週40時間にした上、給料を20%ダウンさせました。労働力が大きく減少した中で提案書の実現、仕様書の遵守のためには、残業は避けられなかったといいます。事業命令通りに全職員の残業をゼロにしても「コストのかかる館長」とのレッテルを貼られ、解雇されたということです。

これについての足立区の姿勢は「民民の問題であり、区のあずかり知らないこと」というもの。このセリフは私が今年の予算特別委員会で、この制度の労働環境における課題を明らかにし、江戸川区の姿勢を質したときの所管課の答弁と同じです。しかし、官製ワーキングプアが指摘される中、あくまでも区の施設で働く方々の労働条件については、直営時のデータをもとに区が標準人件費を示すなど、積極的に関与して然るべきです。少なくともこのような不当解雇を野放しにしてはなりません。

私たちは、指定管理者制度はモニタリング制度と不可分だと主張してきましたが、まさに当の館長が嘆いていたのも区のチェック体制の不備です。
すでに指定管理になっている篠崎図書館では、指定1年以内にスタッフの1人が退職、2人が他区の図書館へ転職しました。専門性の低さ、労働対価の低さは指摘してきたところであり、すでに継続性に問題が生じています。やはり労働環境に問題があるのでは?
江戸川区もモニタリング制度の確立が喫緊の課題です。