まちづくりの歴史を振り返ると、行政による強力なリーダーシップが大きな成果を上げてきた時代がありました。しかし、近年においては、住民と行政のパートナーシップによる「住民参加のまちづくり」がすすめられるようになり、江戸川区においても、2002年策定の長期計画に「区民との協働」というキーワードが盛り込まれて以来、その理念は一定の周知がなされてきています。
「区民との協働」とは、分権の時代を迎え、「住民の意思をより反映した区政にすること」だと考えます。まちづくりの主役は区民であり、その意思をしっかりと反映させるために、専門家などの知恵や知識、技術を適切に注ぎ込むことで調整を図り、共同で施策を練り上げ、事業をすすめていく、ということがなされてはじめて真の「協働」と言えるのではないでしょうか。そのためには、何といっても徹底した行政情報の公開と十分な説明責任が大前提であり、その上で、区民の意見をきちんと反映させるしくみを制度化していくことが必要ではないかと考えます。「区民との協働」をさらにすすめていきたい、との思いから、その現状を検証しつつ、3つの角度から質問をしてまいります。
先の総選挙において、行政主導ではない、生活者の声、市民の意思こそが反映される新しい政治が選ばれました。
大きな経済危機にさらされ、生活の苦しさが増す中では、ことに公共事業に対しての見方は厳しくなり、無駄な公共事業はもういらない、という国民感情はピークに達した感があります。
注目されている国の直轄事業・八ツ場ダム計画については、ダムに頼らない、現地の生活再建策をすすめる方向で調整が行われようとしています。
この計画に象徴されるこれまでの大型公共事業は、それが半世紀も前に計画されたものであっても、一度決めたら必ず実行する、というスタンスですすんできました。そもそも事業化の根拠があいまいであったり、時代の流れの中では、事業の必要性に変化が表れてくることもあります。ときに立ち止まり、事業の必要性や有効性の検証をし、計画どおり行うべき事業かどうかを住民参加で考えるしくみがあれば、住民も行政も、多大な痛手を受けることは避けられるのではないでしょうか。
直轄事業といえば、江戸川区においても、大型公共工事・スーパー堤防事業が、北小岩において新たにすすめられようとしています。
本事業は、反対の声が依然大きくある中で、11月の都市計画審議会にて、計画決定が諮られるスケジュールが組まれています。説明会の実施や公告・縦覧に基づく意見書提出の手続きが定められていることで、区は、住民参加を保障している、という判断があるものと推察します。しかし、区民の側からすれば、ここで出された意見がどう生かされていくかは不明確であり、その有効性はなかなか実感しづらいものです。
この事業のあり方について若干触れますと、区が実施する土地区画整理事業の前提として、国のスーパー堤防事業ありき、という構図になっていることが、住民の苦悩を否が応にも増大させています。法の手続きの中では、区が担当する土地区画整理事業についてしか扱われず、スーパー堤防事業の是非は問われません。そこには、生活再建の前提としてダムありき、ですすめられてきた、八ッ場ダム計画と類似する根本的な課題が横たわっていると言えます。
年金・医療・福祉など日常の暮らしの安心こそを求める声が高まる中、多額の税を投入する大型公共事業の必要性と費用対効果はますます厳しく問われていきます。2004年には景観法が、昨年には歴史まちづくり法が施行され、まちの姿を一変させる都市開発を行なってきた時代にはなかった、景観への配慮や、今あるまちの姿を残すことに価値があるという視点の法律が生まれているのも、時代の要請と言えるでしょう。
2000年の都市計画法改正によって、都市計画の決定・変更手続きについての付加を、条例で行なうことも可能となっています。今後、地域と時代の価値観に合致した公共事業を行なっていくには、それが国の政策であろうとも、やはりそこに住む住民の意思をしっかりと反映させるしくみを、自治体として積極的に検討していくことが必要ではないでしょうか。
住民意見の反映についての現状のご認識と、今後に向けての区長のお考えをお聞きします。
*都市計画への住民参画については、誰が住民を代表するのか、という根本的な問題があります。現状は、公聴会にしても意見書提出にしても、「誰でもできる」のであって、その人が住民を代表しているかどうかは問われておらず、だから、重要な扱いもされていないというのが現実です。そのため、市民を無作為抽出で選び、徹底した情報公開のもと市民討議を行なうということが、すでに市部において、外環道をテーマに行なわれていたり、あるいは住民投票を条例で定めていたりします。今、国が大きく変わろうとしていますが、国と自治体の関係を自治体側からつくりかえて行くことにはまた大きな意味があります。住民の意見反映は重要であると認識されながらも、確立していない分野であり、自治体として積極的に取り組むべきと考えます。