「八ツ場ダム建設中止の即時撤回を求める意見書」に反対討論①

討論内容報告

→先週、「八ツ場ダム問題の本質」をテーマにした世田谷ネット主催の国政フォーラムに参加。生活者ネット時代からこの問題の先頭に立ってきた大河原まさ子参議院議員(右)と意見交換。中央は、都議会生活者ネットワーク幹事長の西崎光子都議、左は、小平・生活者ネットワークの苗村洋子市議。

第二回定例会での「八ツ場ダム建設推進を求める意見書」に続き、自民党から表記の発議案が出され、再度反対討論に立ちました。以下、前半、後半に分け、全文をご報告します。

ただいま上程されました第54号発議案に対し、反対討論を行ないます。
長年、東京の水問題に取り組んできた私たちは、特にこの10年間、一都五県の多くの市民の方々とともに、生活者の立場から、八ツ場ダムの不要性を訴えてきたところであり、本ダム中止を表明した新政権の姿勢を強く支持するものです。
そのことを申し上げた上で、さきほどの趣旨説明に沿い、順次討論をしてまいります。

まず、全事業の7割が進捗しているという点についての誤りを指摘します。
この7割が意味するものは、八ツ場ダム建設事業の事業費4600億円のうち7割が昨年度までに使われているということであり、工事の進捗率とは全く別のものです。現に、本体のダム工事は未だ着工されていません。関連事業についても、国道の付け替え工事の進捗率は6%、県道の付け替えは2%、代替地造成は10%という状況です。鉄道の付け替え事業については75%まですすんでいるとはいえ、新しい川原湯温泉駅付近は用地買収すら済んでいないところもあります。ダム建設予定地を国道と鉄道が通過している現地では、付替国道、付替鉄道をまず完成させ、現在ある国道と鉄道を廃止しなければ、本格的なダム本体工事を始めることはできません。未だ残された工事のほうが多いというのが現状です。

次に、カスリーン級の台風が再来すれば、甚大な洪水被害が発生するという点について、反論します。昭和22年当時の氾濫面積が440平方キロメートルという実績であったのに対し、現況の地形における氾濫面積が530平方キロメートルと、より被害が拡大するという想定はおよそ不可解です。この60年、カスリーンの再来に備えるために、堤防の嵩上げ、補強、河床の掘削など、巨額の経費をかけて河川改修工事が延々と行われてきたはずです。にもかかわらず、当時よりむしろ氾濫面積が広がってしまうというのでは、国土交通省は過去の改修工事の効果を自ら否定していることになるのではないでしょうか。

3番目に、八ツ場ダムがなくなれば洪水調節が利かず、治水安全度が著しく低下するという点についてです。治水面において、国が八ツ場ダムを必要としてきた根拠は、200年に一回の洪水、すなわちカスリーン級の台風が来た場合、基準地点八斗島において想定される毎秒22000立米という流量を、計画高水量の16500立米にするため、その差については上流にダムをつくることで調節しなければならない、というものでした。しかし、記録が残っている昭和26年から今日に至るまで、100年に一度という大雨も実際にありましたが、そのときでさえ最大流量は1万立米未満であり、その倍以上である22000立米の根拠が疑問視されてきたところです。これについては、以前から指摘しているとおり、その基本となるデータが誤っていたことがすでに判明しています。一都五県の知事らを被告とする、八ツ場ダムへの公金支出差し止めを求める住民訴訟で、原告らが国土交通省から入手した資料によると、現況の河道断面と既存のダム施設のもとに、カスリーン台風の実績降雨をあてはめて流出計算をした場合、八斗島地点の洪水流量は毎秒16750立米であることが示されています。これは、カスリーン台風時の実績流量の17000立米より低く、これまでの想定値22000立米を大きく下回る数値です。このことは、ダムで毎秒2400立米の洪水調節をする必要性がないことを示すものと言えます。ダムが中止となっても、もちろん、その分莫大な費用をかけて河川整備をする必要もありません。

八斗島での基本高水量は、昭和22年以来4回変更され、昭和45年には26900立米という最大値が設定されましたが、そこには八ツ場ダムの8倍という巨大な沼田ダム建設計画がありました。これが2年後に中止となり、その後基本高水量は昭和55年から22000立米とされてきたのです。基本高水量なるものは、緻密なデータ分析のもとに出されているのではなく、上流にダムを建設するために、河川管理者である国が恣意的に定めてきたものと考えられます。