政治学者・山口二郎さんからネットへのメッセージ

新政権にローカルパーティの思想を

→7月の都議会議員選挙では、ネット候補者の応援にも駆けつけてくださいました。

 政権交代が実現した今年、以前にもましてマスメディアにもよく登場している政治学者・山口二郎北海道大学教授が「政権交代とローカルパーティ〜地域から変える政治」をテーマに、東京ネットでお話くださいました。


報道の中には、05年の総選挙と今年とでは構図は何も変わらない。『郵政』のフレーズが『政権交代』に変わっただけ、という論調があるが、そうではない。
郵政選挙のときに、郵政民営化の中身をわかっていたのは竹中氏とその周辺だけ。有権者は何だかわからず投票した。そして「郵政」でかき集めた票で、後期高齢者医療制度をはじめ、マニフェストにないものを実行した。しかし、今回はそうではない。事前にマニフェストである程度の政治の変化、生活第一路線ということを予想して投票している。ここに大きな違いがある。

オックスフォード大留学時代に、イギリスの政権交代を目の当たりにし、人間の能力開発のために人に投資する政治を見てきた。子ども手当はいいことだ。ただ、CO2削減を言いながら、高速道路無料化や暫定税率の廃止を謳っているところなどには、その考え方がよく見えない。manifestoは宣言、manifestは積荷目録の意。現状は後者であり、ここに思想を吹き込み、真のmanifestoにしていくことが必要だ。

これからは低い賃金でも社会的生活が営めるようにしていくことが大事。当然、男女協働社会であり、育児・介護の社会化をよりすすめなければならない。この分野はこれまで供給側の発想でリスクを個人化してきたため、ニーズが溢れかえっている。需要に合わせた供給を確保することでリスクの社会化を図る必要があり、教育も同じこと。子ども手当、戸別保障などには、官僚采配の余地を残さず、透明性の高いルールをつくって再分配することだ。北欧は、普遍的政策においてリスクの社会化を図り、公平性が保たれている。鳩山首相の所信表明にあった「新しい公共」のくだりは、生活者ネットが力を注いできたことであり、さらにネットの力を発揮するときだ。

2時間に及ぶ内容の一部をご紹介しましたが、私にとっての大きな収穫は子ども手当の捉え方。子ども自身に着目したもの、ということは理解するものの、バラマキとの整理はどうつけるのか、とも感じていたところ、「所得制限をしたら行政事務にコストがかかり過ぎる。家庭の所得が増えるのだから、税で取り戻せばいい」と。なるほど、子育ての社会化と同時に納税の増加にも。また、私たちが定額給付金のときに提案した寄付のしやすい環境をつくって、公に還元する、ということもさらにすすめればいいのだ、と得心しました。