消費者の立場に立った食品表示を

遺伝子組み換え作物に続き、クローン牛も

福祉健康委員会に、食品の表示義務強化について、国への意見書提出を求める陳情が出されました。具体的には、加工食品、遺伝子組み換え食品、クローン牛についての表示の厳格化を求める趣旨です。

食品表示は、消費者の知る権利と、事故が発生した時に製品回収などを行う手がかりとしてとても重要な情報です。しかし、費用や手間がかかるという小売店側の事業への配慮などにより、未だ確立していません。事業者に有利に働く現状は、一方で消費者を混乱させており、知る権利が阻害されている状況は改善しなければなりません。

加工食品の原料原産地表示は、2006年に義務化する品目数が拡大されています。その中で、牛肉のたたきは対象となりましたが、ローストビーフは対象外に。加工の仕方が違うという、消費者にまったくわかりにくい理由によるものですが、アメリカで発生したBSEのこともあり、消費者はどのような牛肉加工品であっても、原産国を知りたいと考えているはず。そしてそれに応えるのが行政の仕事です。
 
お刺身も、消費者は生鮮食品と考えがちですが、2種以上の盛り合わせになるとJAS法では加工食品扱いになります。このように消費者の感覚、考えからずれているのが実状なのです。やはり表示の目的を果たすためには、あらゆる加工食品に原料原産地表示を義務付けることが大原則です。

また、使われているのに、表示が免除されているものもあります。原材料の製造や加工に使われるもので、その製品の製造には直接使われていないもの、また、加工の際に使われる添加物など。何よりも問題なのは「無添加」と表示することに法律の基準が何もないことです。消費者は当然何も添加物がない、と判断しますが、実際はそうではないのです。大手メーカーでは、自主規制をしているようですが、中小メーカーでは依然として「無添加」表示が横行しています。「無着色たらこ」にも、発がん性物質である亜硝酸ナトリウムが使われているといいます。こうした実態とかけ離れた状況については、速やかに消費者に分かる表示に変えなければなりません。

クローン牛については、日本の食品安全委員会は、今年9月、体細胞クローン由来の食品の安全性について、問題なし、とする評価をまとめました。しかし、クローン牛に死産が多いことや、肥育の過程での病死の多発について、その原因は未だ科学的に解明されていません。これまでとは全く違った方法で生まれた牛ということをきちんと表示し、情報提供しなければ、食べたくないと思っていても、消費者は選別することができません。食品安全委員会は、従来の牛とクローン牛に違いはない、実質的同等だと言っているわけですが、遺伝子組み換え作物についても、輸入が始まった1996年当初、行政は実質同等性を主張していました。しかし、その後、不完全とはいえ、徐々に遺伝子組み換え食品の表示がなされるようになりました。全国の消費者による220万筆もの署名が国を動かしてきた成果でもありますが、クローン牛も同じことが言えるのではないでしょうか。

世界の表示制度を見ても、遺伝子組み換え作物を大量生産しているアメリカやカナダでは表示の義務化はされていませんが、EUでは厳格な義務が課せられています。安全性の確たる保証もないままに、世界中で最も遺伝子組み換え作物を食べさせられている日本だからこそ、EU並みの表示制度の確立が必要であり、クローン牛、加工食品についても同様です。