「区内では地盤が高く、強固である北小岩で、なぜ実施しなければならないのか」という基本中の基本の質問に対するこのたびの(!)回答は、地図を示しながら「流れはまず下総台地にぶつかり、そこが破堤して、それが跳ね返り、北小岩側が破堤する」。
この説明、いかに素人であろうとも、首をひねります。一度破堤すれば、水の勢いは弱まるのでは? それなのに、さらに対岸まで破堤するとは・・。
スーパー堤防事業が予定されている2つの地域住民による「スーパー堤防と街づくりを考える会」のみなさんは、江戸川沿川の歴史や地域の地形・地質はもちろん、本事業について非常によく調査研究されています。専門家とも連携し、継続してこの問題に取り組んでおり、区の最重要施策である本事業を担当する課長が、何故か3年間で3人次々と替わったのとは対照的。決して感情論に流れることなく、常にデータや最新の研究も含め、科学的知見をもとに意見を集約し、さらには行政がなかなか気付かない生活面・コミュニティ面でも、当事者としての的確な指摘をされていると感じています。
集会に参加していた会員のひとりである地学の専門家(元都立高校教諭)は、
「江戸川の河道からして、下総台地に衝突する攻撃斜面は2ヶ所だが、南の箇所は破堤したとしても北小岩より下流であり、真間の入江だった低地に流れ込み、北小岩を襲う可能性はまずない。よって、破堤箇所は、北側の松戸市内と特定できる。河川は洪水時には直線的な流れになるが、その箇所と台地の縁はほぼ平行。平行なものに衝突してどうして跳ね返るのか。台地の縁に沿って流れるのでは。仮に跳ね返ったとしても、水流の持つエネルギーは衝突によって失われると考えるのが常識。破堤が起きたとしてもその部分は狭く、いきなり堤防高さまで水位が上がるのは極めて無理がある。しかもあふれたあとは広い面積に広がり、水深は浅くなって、水は地面との摩擦の影響が大きくなることで流れのエネルギーは大幅に失われる。これを利用しているのが『遊水地』であり、川をあらかじめあふれさせて水害を防ぐことから、治水において大きく期待されているもの。もし、松戸で破堤すれば、遊水地の働きをしてくれ、北小岩はむしろ安全と言える」
「摩訶不思議」の本来の意味は「人智を超えた素晴らしさ」ということだったそうですが・・。余りにも超人的、独創的な区の説明の今後やいかに?
集会後「区土木部の専門性のなさが改めてよくわかった」との声が聞かれました。