「スーパー堤防」、仕分けのあとの区の判断を問う

「廃止」とされても、区は「続行」の強行姿勢

 「スーパー堤防事業」が事業仕分けで「廃止」と判断され、余りに非現実的で、不要不急の事業であることが全国民に知れわたってから4日目の11月1日、江戸川区土木部は「多くの問い合わせをいただくが、このまま続行するので安心を」と記載した「まちづくりニュース」を地元住民に配布しました。

 これまで繰り返し指摘してきたことですが、区土木部の考え以外は聞く耳を持たない、という悪しき体質が、この期に及んでも露呈した格好です。行政刷新会議の事業仕分けなぞ、痛くもかゆくもない、と言わんばかりですが、本事業は国と区との共同事業なのです。

 区では現在、荒川左岸の小松川地区においてスーパー堤防事業が進行中です。小松川は東京都の再開発事業地であり、ここでの事業化は区の仕事ではなく、国と東京都の協定に基づくもの。すでに空地であった土地をスーパー堤防化して、その上に区が中学校を建設する予定。この事業を続行するというのであれば話はわからなくもありません。

 しかし、ニュースが配布された「北小岩1丁目東部地区」のスーパー堤防事業と一体となった区画整理事業は、まだ事業認可も下りていません。もちろん、国と区との協定も結ばれていません。事業認可が下りてはじめて、協定が締結され、資金計画が動くことを思えば、本事業は新規事業であり、「一旦廃止」という分類に当然入るものでしょう。現段階では、国としての正式な決定ではない、と言いたいのでしょうが、仕分けに沿った政治判断がなされる可能性は極めて高い、と考えるべきではないでしょうか。

  本地区は、東に江戸川堤防、南にJR総武線、北と西は千葉街道に囲まれた、東西160m、南北120m、1.4haの区画。家屋は70軒ほどで、居住者は255人。しかし、事業認可どころか都市計画決定すらしていないうちから区は用地買収を行い、19軒がすでに転居していきました。スーパー堤防も区画整理も買収を前提としない事業であるにも関わらず、住民の早期の生活再建のため、減歩緩和のため、を理由に、行政主導による江戸川方式で進めてきた経緯があります。

 現在も20軒以上の住民の明確な反対の意思があり、この方々の所有面積は5割近くに及びます。強制的な直接施工はしない、と区は明言していますが、ならば、事業認可が下りたと仮定しても、肝心の換地処分など進むはずもなく、事業の成立は極めて難しいと判断すべきではないでしょうか。

 このタイミングで区が事業続行のニュースを出したことは全く理解に苦しみます。区の説得に応じたり、結果的に追い出してしまうことになった方々への配慮でしょうか。では、今もそこに住む反対住民の心情をどうするのでしょうか。

 すでに、当地でスーパー堤防化を図るために、区がその必要性の根拠として説明してきた要素が次々と崩れている事実もあります。今回の仕分けを機に、改めてどのようなまちづくりが必要なのか、一旦スーパー堤防事業と切り離し、住民と真摯に話し合う姿勢こそが求められます。