瑕疵ある事業計画決定としないために

一般質問報告③都の資料で方針変更示唆

そもそも、本事業は住民との合意形成という基本の部分に大きな課題が残っています。当該地区では、計画面積の約半分を占める権利者26名が明確に反対しているのです。国の直轄事業であれ、区の単独事業であれ、この方々の移転が前提となりますが、その見通しはありません。しかも区は、強制的な直接施行は行わないと明言しています。施策の円滑な推進に課題を抱えており、施策が長期間停滞する可能性は大きいと言えます。

先の委員会における住民合意に関する都の答弁は「ほぼできあがった」というものでした。しかし、都市計画事業における合意基準はあいまいである上、本事業では、住民がスーパー堤防との一体事業であると信じこまされてきた事実に照らせば、この答弁は、国との共同事業を前提とした従前の状況を踏まえたものと言えます。都は、単独事業との判断をしており、区の都市計画決定及び事業計画案公告・縦覧の際とは、事業内容が異なっているのが現状です。そして最大の問題は、この重大事実について、地元住民への説明を明らかに欠いているという点です。

事業計画案は白紙とし、振り出しに戻って、区民への説明責任を果たし、丁寧な話し合いをやり直すべきと主張しました。

区長答弁は「やり直すことは考えていない」。

今年1月、都の都市計画審議委員に配布された、区における計画案縦覧の際の「意見書」に対する「施行者の見解」、つまり、区の見解の中に次のくだりが初めて登場します。「高規格堤防事業の有無に関わらず、土地区画整備事業の施行にあたっては盛土造成を行う」。「スーパー堤防によらずに区が行う」とした議会答弁や公文書はこのときまで存在しません。区は、認可権者である都の資料を通して、初めて公式に説明を変えているのです。

本来、都市計画のように国民の権利義務に直接影響を与えることになる行政手続については、手続の透明化や情報公開、説明責任の遂行が特に求められ、法の運用指針にも、これまで以上に住民参加の機会の拡大、情報公開及び理由の開示等に意を用いていくべき、とあります。区は、この責務を果たしていません。

このまま事業計画案が通るとするならば、国との共同事業を前提とした都市計画決定、縦覧した事業計画案とは、事実上異なった事業計画を決定することになってしまいます。これを強行すれば「瑕疵ある事業計画の決定」との批判はまぬがれません。これは、江戸川区行政のみならず、東京都全体の都市計画行政にとって汚点です。