震災孤児にとっての最善の環境とは?

国連指針と文科省構想

 東日本大震災によって両親を亡くした子どもたちは、5月14日付けで141人にのぼり、現時点で阪神淡路大震災の68人をはるかに上回っています。児童福祉施設に入所したのは2人のみ。大多数の子どもたちは今後、3親等内の親族が養育する親族里親制度に則って育ちの環境を整えることが望まれますが、申請は現在2件にとどまっているといいます。本制度は児童福祉法に定められており、子どもの年齢によって毎月4万7680円から5万4980円の生活費と、就学状況に応じた教育費が支給されることになっていますが、こうした周知が行き渡っていないことも、制度適用がすすまない理由のひとつと言えます。里親制度には他に、養育里親、短期里親、専門里親があります。

 増え続ける震災孤児のために、文部科学省は、岩手県に全寮制の小中学校を2、3校建設するという構想を発表しました。「孤児になった子ども同士の絆を大切にしながら、学びと育ちを支えていく」というもの。しかし、「ポスト311えどがわ」の集会では、この構想への問題が提起されました。

 国連の「児童の代替的養護に関する指針」には、自然災害による「緊急事態における養護」も規定され、その運用において、「長期的に大人数の児童を同時に養護する居住施設の新設を禁止」するとされています。これは、なるべく家族・親族や地域から子どもを離さない、という理由から。さらに、「施設養護は絶対必要な場合に限定する」「地域社会における養護が、社会性や発達の継続性をもたらすことから奨励されるべき」ともされています。

 これに照らせば、文科省の構想は、せっかくの里親制度をなし崩しにしてしまう、また、早々と地域コミュニティから子どもを引き離してしまうことになりかねません。そして、住み慣れた地域から遠い場所、しかも学校生活も日常生活も一か所で営まれる、という状況が過度なストレスを生み出してしまうことが懸念されます。

  そもそも、文科省の構想は、国連指針の対極にあると言えないでしょうか。子どもたちの最善の利益について、引き続き考えていかなければなりません。