折りしも同日、「治水のあり方シフト研究会」による緊急セミナー4回目が議員会館で開かれました。今回の情報開示を求めた、八ッ場ダム建設をめぐる6件の住民訴訟で住民側弁護団長を務める高橋利明弁護士、公共事業チェック議員の会事務局長の大河原雅子参議院議員らも出席。前半は、水源開発問題全国連絡会・嶋津暉之さんの「基本高水の問題点を整理し、あるべき治水対策を考える」。いつもながら、ち密にしてわかりやすい理論展開。
このセミナーに備え、研究会の代表でジャーナリストのまさのあつこさんが先週江戸川区に取材に見えました。江戸川区は利根川水系の最下流域にありながら、八ツ場ダム推進を表明。江戸川区議会においても、推進の意見書、また、中止が公表されるや、中止撤回を求める意見書を次々と国に提出してきた経緯があります。その都度、江戸川ネットは反対討論をしてきました。
治水事業は、命、財産、まちを守れるのか、という視点が不可欠。ならば、八ツ場推進の自治体では、どのような防災まちづくりをしてきているのか? 2日の緊急セミナーでは、まさのさんが、江戸川区での取材も含め「そのまちづくりは自然の流れに逆らっていないか?」というテーマで報告をされました。概略は以下のとおり。当日資料はこちら。
江戸川区が恐れているのは高潮。江戸川ではなく、荒川の水位を意識している。言わば川ではなく、海。区役所前には荒川の水位を示す立派な水位塔が。
区の資料では、荒川の開削は東京の遊水地として設計され、荒川の堤防は都心側より江戸川区側のほうが薄くて低い、とある。群馬県議会の八ツ場ダム特別委員会で「専門家」として講演した前江戸川区土木部長も「当時どこにも家がなかったんだろうが、江戸川区側は切れてもいいようにつくられてしまった。これは運命。荒川が切れることは甘受するが、江戸川は守ってほしい。」と八ツ場ダム建設を訴えた。
先の意見書を発議した区議会自民党はというと「党の本部から推進するよう要請があったので・・現場を視察して発議した」との本音が、2009年10月9日決算特別委員会議事録(P58)に残っている。江戸川区の議員にとっての現場とは江戸川区であるはず。
江戸川区史で過去の水害をひもとくと、カスリーン台風以外はすべて内水氾濫や高潮。カスリーンでは、9月14日に利根川流域・栗橋で決壊、5日間かけて江戸川に水がきた。しかし「このような大水害にも関わらず、死者は1人に過ぎず、負傷者も143人ですんだことは不幸中の幸いといえよう。」「浸水速度が緩慢であった上、関係当局の避難誘導、救助作業が比較的順調に行われた結果であろう」と、非常にいい教訓が区史に残されている。
さらに、2009年4月に国交省港湾局が発表した東京湾の大規模高潮浸水想定では、最大レベルになっても江戸川区は浸水しない。東京湾岸沿岸自治体がどこも浸水する中で、江戸川区だけが浸水しないとの想定になっている(この部分は稲宮の決算特別委員会議事録P74を引用)。
区に、八ツ場ダムで江戸川の水位はどれくらい下がるのか聞くと「下がらない」と。驚いて、その上司に聞いても「基本的には下がらない。関東地方整備局に聞いてほしい」。同局河川計画課への取材では「計算していない。昔は実際の工事で公表していたが、計画論でそういうのをやったことはない」。
では、江戸川区が八ツ場ダムを推進する理由は一体どこに?