清掃工場、前提と現実のギャップ

ダイオキシン類対策を放射能対策に準用

 清掃工場は放射能汚染物質を処理する前提にありません。しかし、原発事故により、結果的に汚染された廃棄物を焼却処理している現実があります。こうした状況を受け、6日、東京23区清掃一部事務組合は、職員・委託業者を対象に放射線学習会を開催しました。講師は、8月に開かれた江戸川区主催学習会の講師で、来る16日の区議会福祉健康委員会学習会の講師でもある首都大学東京健康福祉部放射線学科長の福士政広教授。自治体から引っ張りだこのようです。

 「一部事務組合」は 地方自治法284条に定められた「特別地方公共団体」。近隣の自治体が集まって、行政サービスの一部を共同で実施するときに設置されます。法律上、各区と同じ組織であり、東京23区清掃一部事務組合は「24番目の区」と言われることも。住民のいない、廃棄物だけを扱う地方公共団体です。

 さて、その清掃一組へのヒアリングの続きです。
 江戸川清掃工場から出た8000㏃/kg以上の飛灰は計487t(7/13〜8/31)。天蓋車にブルーシートを敷き、重金属固定材で固めた飛灰の入った袋を入れ、四方からシートを覆いかぶせ、蓋をして目張り。さらに車の脇で放射線量を計測した上で中央防波堤に運搬しました。その最終処分場では、浸透抑制のための措置を講じた上で厳重保管されたままです。国が処理方法を示しましたが、実際どうするかは検討中。前述のとおり、そもそも放射性廃棄物の処理は清掃一組の範疇外。今後発生する処理費用については、国と東京電力に求償することにしています。

 気になるのは、清掃工場内での作業。ダイオキシン類のばく露防止措置は労働安全衛生規則に定められています。作業環境に応じて管理区域を3段階に分類。保護具について、第1管理区域は、一般的作業衣に防塵マスク、第2は、不透性保護衣に防塵防毒マスク、第3では、不透性保護衣に、作業場内空気の直接吸引を避けるためのエアラインマスクを付けます。5月末から稼働停止となり、今月再開した世田谷清掃工場では、一部で第3管理区域の設定がなされていました。

 では、放射能被曝についての定めは? それはなし。なぜなら、それを定めるということは、清掃工場=放射線管理区域になってしまい、大前提が崩れるから。現状、ダイオキシン類に対するルールを準用し、工場内は第1管理区域ということに。スタッフは線量計を付けて作業にあたり、個人別に積算データを取り、健康管理を図るのが今回の新たな措置。幸い高い数値は出ていないとのことですが、これからも続く毎日の作業です。

 原発事故後、焼却灰における放射線の数値が基準を超えたのは7都県、42施設。主灰でも7施設が基準を超えた福島での最高値は9万5300㏃kg。とはいえ、被災地の瓦礫も含め、日々発生する大量の廃棄物を何とか処理しなければ公衆衛生の面でも問題です。現実的には、やはり安全な焼却が今後も求められるでしょう。

 放射線管理区域とは「人が放射線の不必要な被ばくを防ぐため、放射線量が一定以上ある場所を明確にし、人の不必要な立ち入りを防止するために設けられる区域」。

 清掃工場の前提と現実に大きな乖離があること、そして、清掃工場が放射線管理区域の定義に該当していることは明らかでは?