「復興計画」に議会はいかに関わるか?①

「市民と議員の条例づくり交流会議2011」より

人と防災未来センター研究部研究主幹・紅谷昇平さんから、まず「復興計画とは何か」を学ぶ
人と防災未来センター研究部研究主幹・紅谷昇平さんから、まず「復興計画とは何か」を学ぶ
被災自治体が策定する「復興計画」は、自治体の「総合計画」と同等、もしくはそれ以上の包括的な内容になっていきますが、「総合計画」が市民も参加しつつ、3年ほどのスパンで丁寧につくられる環境にあるのに対し、「復興計画」は時間的な制約が大きいなど、厳しい条件下での策定を余儀なくされます。特に東日本大震災では、政府の対応が遅れていることもあり、阪神淡路大震災の際には半年ほどで策定した本計画の策定が遅れています。 

「復興計画」は有識者や行政によって策定されるケースが多いのが現状ですが、それでは、議会は、市民は、本計画にいかに関わっていくべきなのか? 7月末、京都で開かれた「市民と議員の条例づくり交流会議2011」では、分科会で議論しました。

まずは、事前に「復興計画とは何か」を知っておくことが重要。そこで、ひょうご震災記念21世紀研究機構 人と防災未来センター研究部研究主幹・紅谷昇平さんから講義を受けました。テーマは「復興計画と議会」。復興については、何度も講演されている紅谷さんですが、「議会がいかに関わるか」というお題は初めて、と。同センターでは、「災害対応の現地支援」という重要機能を果たすため、今回も宮城県庁に入り、宮城県及び政府現地対策本部の支援員として研究員が常駐、南三陸町の「復興計画」にも関わっています。

「復興計画」は「総合計画」の復興版。その内容をどこまで細かく書くか、どういうタイトルにするかについて法律等で決まっていることはありません。今回のような大災害になると、「総合計画」を作り直すような形になりますが、通常の計画や各分野の個別計画が、上位計画→基本計画→部門別計画、また、広域計画→地域計画といった流れになるのに対し、その緊急性の高さから、これらが同時進行することに。市町村が先につくり、県があとになることも。時間的制約に加え、自治体の意思決定のもととなる国の制度が明確になっていないなど、その推進体制は通常とは大きく異なります。

兵庫県では被災から半年後の7月、「阪神・淡路震災復興計画(ひょうごフェニックス計画)」を策定。特に短期間のうちに取り組む必要のある産業、インフラ、住宅については、数量計画を含む「緊急3ヵ年計画」を11月、策定しました。兵庫県は、こうした数値が入った計画が肝要とアドバイスしています。

「復興計画」への議会の関わりとしては、議員が策定委員になる場合と、「復興計画」案ができた段階で関与する場合があります。南三陸町は、当初議員を委員とする検討をしましたが、議会は行政の監視が重要任務であり、行政と一体となって策定委員になるのではその機能が果たせない、という考えに落ち着き、分離した経緯が。女川町仙台市も。一方、神戸市では委員100名中議員6名、陸前高田市では同50名中3名と、議員が策定委員になっています。

「復興計画」策定にあたり、大きな争点となるのは、大規模な公共事業をどうするか。兵庫県では「夢の架け橋記念事業」などを不急の事業として延期しました。公共事業については、党派による考えの違いが明確であり、地域においても「総論賛成、各論反対」といった状況になりがちです。そもそも、不要・不急の公共事業はない、というのが行政側の主張であり、たとえば防災機能向上のための高台や高い堤防の是非については、さまざまな考え方があることから、専門家の意見を集約しても答えが出るものではありません。そこで、やはり議会での十分な議論が重要となります。内容を丁寧にチェックして議論を尽くし、修正すべきは修正する——。これが議会の本領とのとらえ方がある一方、先に述べた厳しい条件下では、日頃から地域の課題を熟知する住民代表の議員が計画策定に直接関わることが有益、という見方もあります。

兵庫県では、いずれのプロセスにも議会関係者は入らず、行政が策定した計画に意見する形をとった一方、神戸市は「復興計画」を検討する審議会に議員が入り、行政と議会が一体となって計画を策定しました。今回の被災自治体でも関与の仕方が分かれていますが、「総合計画」への関与のあり方同様、これら計画を議決事件にするかどうかも含め、議会のあり方、考え方が問われることになります。