本事業のルールは、堤防高の30倍の幅をまち側に確保し(堤防高さが10mであれば、300mの幅)、もとの堤防天端を起点としてなだらかな傾斜の盛り土をし、その上にまちづくりをするというもの。つまり、まち全体が堤防の役割を果たすため、越水に耐えうる構造となるという理屈。しかし、この幅が足りないなど、ルール通りに施工されていないことが改めて判明し、洪水時に機能しないおそれがあることが示されたものです。
これまでも指摘してきたとおり、実際、江戸川区と国の協働で完成したとされる「平井7丁目」も、財務省官舎の建て替え時期でないことから、30倍の幅が確保できず、スーパー堤防と官舎との間には5mの絶壁が。さらに昨年5月、事業計画決定がなされた「北小岩1丁目東部地区」も30倍の幅が保てない不完全な事業計画となっています。さまざまな課題が指摘されてなお、強力に推進したい区の思惑に反して、来年度、本事業に国の予算がつかなかったこと、反対住民から取消訴訟が提起されていることは、すでにお伝えしたとおりです。
これも従前から指摘しているとおり、東京都と国の協働で実施された、荒川沿川、江戸川区小松川地先にある都の防災公園「都立大島小松川公園」も、堤防天端の起点の下に道路を通したために、大きな空洞ができており、強度不足は否めません。公園の地下に保管されている災害備蓄品も水浸しになることが予想されるなど、防災公園として十分機能するかどうか問題提起してきたところです。
水害のおそれについて、過大な数値を示して不安をあおる。一方で、水増しした実施率によって成果を強調し、事業継続をもくろむ。何とも陳腐でお粗末な顛末。そもそも、日米貿易摩擦解消のための内需拡大策、親水性を持たせた住宅供給の手法として考案された本事業。(昭和61年、国際協調のための経済構造調整研究会が中曽根総理に提出した報告書「前川リポート」参照)「治水対策」という冠を後付けすることで事業の延命を図ろうとしたものの、実際機能しない制度であることは、もはや自明の理です。