避難のためのスーパー堤防・こうも違う江戸川区と足立区の見解

最後の砦も崩れる?

 江戸川区がスーパー堤防を必要とする「最近」の理由は、零メートル地帯にあって、水害から身を守るための「高台」が必要だから。区の洪水ハザードマップによると、区北部の住民は、江戸川を渡って対岸の国府台台地へ逃げることになっています。河川氾濫が想定される中、わざわざ水があふれそうな川を渡らせる計画自体、避難計画として有効なのかどうか。だから、区は区内に高台をつくろうとしているのだ、と釈明したいところでしょう。

 しかし、同じスーパー堤防による高台について、足立区の洪水ハザードマップは真逆の避難誘導をしています。

 足立区には、荒川沿いに3か所、スーパー堤防があります。
宮城 河口から17km地点 延長300m 面積1.6ha 荒川と隅田川の間の空地活用
小台 河口から15km地点 延長670m 面積12ha 舎人線「小台駅」との協働事業
千住 河口から12.5km地点 延長100m 面積1ha 廃校の跡地利用

 足立区の洪水ハザードマップには、この箇所が「スーパー堤防」として明記されていますが、何とそこにはこのような注釈が。
 「中川公園やスーパー堤防は、浸水想定区域外ですが、屋外であり、備蓄資材もなく、周囲から孤立するため、ここには避難しないで下さい」(マップ右下の*印部分を拡大してよくご覧ください)

 「スーパー堤防」であり、「高台」ではあるけれど、そこには避難しちゃダメ! とわざわざ区民に教えているのです。江戸川区との違い、極まれり。

 江戸川区が依然として事業化を目論む江戸川沿川「北小岩一丁目東部地区」スーパー堤防化の理由も「避難のための高台」。しかし、川沿いに高台をつくったところで、そこに避難した住民は、勢いを増し、今にもあふれ出そうな河川を眺めながら「やれやれこれで安心」と思えるでしょうか。高台は高台でも、川や海から離れたところに逃げるのが鉄則では? 実際、3.11のときには、高潮防潮堤になっている葛西臨海公園には「近づかないように」との防災無線が流れました。葛西臨海公園は、江戸川区でも最大・最高の高台であり、洪水ハザードマップには避難場所として明記されていながら、実際は機能しなかったのです。

 「スーパー堤防」を必要とする江戸川区の説明はこの間、コロコロ変わってきましたが、その最後の砦、「避難のための高台」も、足立区の説明を待つまでもなく、非現実的です。

 都市にあっては、わざわざ川沿いに高台をつくるより、中高層ビルやマンションという、すでにある「屋内の高台」への避難誘導ができるよう、調整を図ることが先決では?