女性議員を増やすための各国の選挙制度

東京の地域政党「生活者ネットワーク」は、国政選挙においては、連携できる候補者の方々と政策を共有・確認した上で、推薦や支持を表明しています。生活者の視点、女性の視点で政治にコミットする中では、国政選挙方針でも「女性議員を増やす」ことを打ち出してきたところです。

2011年3月に公表された、列国議会同盟、民主主義・選挙支援国際研究所、ストックホルム大学の共同調査によると、国政における女性議員の多い国は、スウェーデン45%、ノルウェー39.6%、ドイツ32.8%、イギリス22%、フランス18.9%など。韓国は14.7%、日本は11.3%でした。女性議員の増えている国では、「クオータ制」 (quota 。「割り当て・分配」の意味)を取り入れている国が多く、現在87ヶ国が採用。その種類は3つに分類されています。

1.議席割当制・・・憲法又は法律により、議席のうち一定数を女性とする。17ヶ国。

2.候補者クオータ制・・・憲法又は法律により、議員の候補者名簿の一定割合を女性が占めるよう定める。34ヶ国。

3.政党による自発的なクオータ制・・・党の規則等により,議員候補者の一定割合を女性とすることを定める。36ヶ国。

*2.と3.を同時に導入している国は16ヶ国。

【スウェーデン】一院制で、拘束名簿式比例代表制をとっている。1991年の選挙において女性議員の割合が37.2%から33.0%へと減少したことから,女性の政治への参画が後退するのではないかとの懸念が生じ,1994年の選挙では,多数の政党において男女交互の候補者名簿を作成した。また,クオータ制度を導入していない政党においても,候補者のほぼ40%は女性。1998年の選挙では,中央党,穏健党を除く5つの政党でクオータ制を導入。一部の政党においてクオータ制を導入していることが,他の政党での女性の登用に影響を与えていると考えられている。 

【ノルウェー】2009年、一院制に移行。拘束名簿式比例代表制をとる。労働党は、候補者名簿の男女割合を各50%とするとともに、上位2名には、男女双方が含まれるようにしている。中央党、左派社会党、キリスト教民主党は、名簿における男女の割合をそれぞれ40%以上としている。 

【ドイツ】連邦議会は小選挙区比例代表併用制をとる。連邦参議院との二院制だが、国民の直接選挙で選ばれる連邦議会が優位に置かれている。女性の政治参画に積極的だった緑の党がいち早くクオータ制を導入し、社会民主党等の主要政党も導入した。社会民主党は1970年代から検討を始め、その後、平等を求めるアピールや決議では党内の男女平等が実現されないことが次第に明らかになったことから、段階的な導入に踏み切った。緑の党は、50%の割当制で奇数順位は女性とする男女候補者名簿を導入し、社会民主党は,現在、候補者名簿において40%の割当制をとっている。クオータ制をとっていても、その割合や手法の違いにより,女性割合は各政党間で大きな差が生じている。また、各政党では、女性政治家養成のためのメンタリング・プログラムも実施している。

【イギリス】庶民院(下院)と貴族院(上院)の両院制。庶民院では小選挙区制度をとり、議会法にその優越が定められている。労働党は,党内役員におけるクオータ制を導入し、さらに1993年から、労働党議員の引退議席の半分と労働党が有利な選挙区の半分に女性だけを候補者として掲載する「All Women Shortlist」を実施したが,これは96年に性差別禁止法に照らして違法とされた。しかし2002年の性差別禁止法の改正により、政党において「All Women Shortlist」 を実施することが男女間の不平等を解消する上での取組として認められることとなった。国会議員になりたい女性への財政支援「Emily’s List」も93年より実施。2000年には、現職の国会議員が候補者に対して教育的指導や経済的援助をするメンター制も立ち上げた。また、労働党と自由民主党は、1999年、*「Twinning」を導入。労働党と保守党の女性議員の割合の差は大きく,クオータ制の影響が大きいことがうかがえる。 

*Twinning・・・隣接する2つの選挙区をひとつとみなし、党内選挙で最も多くの票を獲得した女性候補者に1つの選挙区で立候補する権利を与え、最も多くの票を獲得した男性議員にもうひとつの選挙区で立候補する権利を与えるしくみ。

【フランス】国民議会(下院)と元老院(上院)の両院制だが、国民議会に優先権があり、元老院は主に諮問機構として機能するなど、一つの議会を構成する議院ではなく、両者とも独立した議会となっている。国民議会では、*「小選挙区絶対多数2回投票制」。1999年の憲法改正により、議員職への男女平等参画が奨励され、2000年に選挙の候補者を男女同数とすることをめざし、選挙における種々の制度を規定したパリテ法が成立した。これにより、比例代表制がとられている上院議員選挙では、候補者名簿の登載順を男女交互にすることが定められた。下院においてクオータ制は採用されていないものの、政党の候補者を男女同数に近づけるため、男女の候補者の比率の差が2%を超えた場合には、制裁として最大75%、助成金が減額される。フランスでは、1982年の違憲判決後、クオータ制という用語は使われておらず、「パリテ」という用語で説明されている。

*小選挙区絶対多数2回投票制・・・国民議会の総定数は491(うち17が海外領土選出)。これを定数1の小選挙区に配分しているが,選挙区内の人口はなるべく均一になるように配慮されている。各選挙区で有効投票の過半数を超える票(票数がその選挙区の有権者数の4分の1を超えていなければならない)を得た候補者を当選者とする。もしどの候補者も過半数に達していなければ,ある一定の得票数以上(10%以上)を獲得した候補者の間で1週間後に第2次投票を行い,相対多数の人を当選者とする。

【韓国】一院制で、小選挙区比例代表並立制がとられている。2004年、政党法を改正、翌05年の公職選挙法改正により、比例代表部分について、比例代表候補者名簿の50%を女性にし、比例代表の奇数順位を女性にすることを決めている。割当比率は2000年、30%であったものが引き上げられた。50%割当は地方議会選挙にも用いられている。小選挙区の候補者については、女性比率30%が努力義務として政党に課せられており、女性候補者の比率に応じて補助金が支給される。 

  日本の制度には、女性議員増加のためのこうしたポジティブアクションの視点が欠落しており、速やかな「クオータ制」の導入が求められます。