情報公開請求で明らかになった真実・八ツ場ダム控訴審~第4回区議会一般質問より②

生活者ネットワークは、利水・治水両面から不要な公共事業であるとの考えのもと、2009年、民主党がマニフェストに掲げるずっと以前から、八ツ場ダム建設の中止を求めてきたところです。特にこの10年は、一都五県の多くの市民の方々とともに、公金支出差し止め訴訟にも取り組んできました。各地で相次いだ地裁での判決を不当として、現在、高等裁判所にて係争中ですが、東京での控訴審が21日(木)、開かれます。 

行政を相手取る裁判は、そもそも行政が間違ったことをするはずがない、との大前提に立ってことが運ぶため、住民側はどうしても不利な立場に立たされます。この8月も、東京高裁第5民事部(大竹たかし裁判長)は、住民側が申請していた7名の証人を採用しない決定をしました。この7名は、東京都の水需要予測や保有水源の評価が著しく不適切であること、また、八ッ場ダムの根拠となる治水計画の目標流量が著しく過大であることなどを改めて明らかにするための重要な証人でした。そこで、弁護団は、公正さを欠く裁判所の姿勢に対し、大竹裁判官らを、本件の審理から除外することを求める「忌避」の申立をしましたが、東京高裁はこれを棄却、この決定に対する最高裁への特別抗告も、11月棄却されています。 

この裁判にあたり、住民側はさまざまな情報公開請求により、貴重な資料を入手してきました。国は、カスリーン級の台風が再来すれば、八斗島地点を毎秒2万2000㎥の洪水が襲い、関東平野では大氾濫が起き、34兆円もの被害が出ると広報してきました。しかし、実は、毎秒1万6750㎥しか流れないことを国も把握していることが判明しています。 

先の区議会でも、八ツ場訴訟関係者が情報公開請求した「高規格堤防に関する整備手法検討業務報告書」をもとに、質問を行ったところです。国交省の委託を受け、この報告書を作成した財団法人リバーフロント整備センター(現・公益財団法人リバーフロント研究所)は、水や水辺に関する様々な課題について、未解明、未開発な技術を先端的、総合的に研究・開発し、これからの社会のニーズに応える社会制度、技術の提案・提供を行う専門機関。スーパー堤防の整備率が低いことから、整備状況の把握とともに分析・評価を行い、家屋移転等を踏まえた整備手法やまちづくり事業との連携のあり方、費用効果分析等もしつつ、今後の検討を行うとし、2010年8月から翌年3月までの期間、3千万円の随意契約により、本報告書を作成したものです。こうした機関が、質問文にもあるとおり、スーパー堤防事業について「まちづくり事業との共同は早晩行き詰る」「復活は非常に難しい」など、ここまでの報告をしていることを真摯に受け止めるべきです。しかしながら、この報告書は、事業のパートナーとなる江戸川区にも知らされていない(土木部長議会答弁)ように、国の「高規格堤防の見直しに関する検討会」委員も見ていないものです。こうした重要なデータや検証結果がありながら、それを公開しないまま、委員に議論をさせて事業継続を決定することは国の進め方として間違っています。自治体としても、国に対し、こうした情報共有を求めていかなければなりません。 

さて、八ツ場ダム控訴審は、12月21日(木)午後1時30分より、東京高等裁判所1階101大法廷にて。弁護団はこの8年間の住民側の主張のまとめを示すとともに、政治による行政のチェックが機能していない状況下、司法判断が厳しく、正しく行われなければならないことも含め、1時間にわたり弁論を行う予定です。結審となる可能性も高い、注目の裁判です。傍聴は抽選となる見込みですので、午後1時10分までに高裁入口2番交付所にお並びください。裁判終了後、参議院議員会館B102会議室にて説明会も持たれます。こちらにもぜひご参加下さいますよう。