「スーパー堤防ありきではない」との主張くずれる~江戸川区スーパー堤防取消訴訟結審①

 16日(水)午後、約2時間に及んだ第10回口頭弁論では原告・被告双方の証人尋問が行われ、結審。12月12日に判決が言い渡されることになりました。江戸川区が当該地区の権利者に対し、除却(家屋取り壊しの上での明け渡し)日として通知している12月16日の、わずか4日前です。

 今日の注目は何と言っても被告証人である江戸川区土木部区画整理課長・山口正幸さんの証言。 

 「本件土地区画整理事業と高規格堤防事業は別個の事業。共同実施とは、この二つの事業について、区と国が移転費や工事の役割分担を行い、時期を合わせて行うこと。共同事業を目指す、とは、共同でなければできない、やらないということではない。都市計画決定の際の理由書に高規格堤防のことが書いてあるのは、背景の事情説明のため。高規格堤防との共同は目指していたが、単独事業も想定していた。」 

  木村美和子被告代理人が問いかける形ですすむ中では、あえて原告側が証拠として提出している江戸川区議会の議事録も引用。しかし、「高規格堤防を前提にした説明をしたのではないか」「区費は0円でできる、との答弁は誤解を与えるのでは」といった問いには「そうではない」「そういうことでもない」を連発。これには傍聴席から失笑が。 被告にとっては何だか逆効果のような・・。

 この主尋問のあと、原告代理人の福田健治弁護士が反対尋問を行いました。「山口さんは江戸川区の指定代理人でもありますから、これまでの準備書面の内容などはすべて理解していますね」「私は高規格堤防ではなく、スーパー堤防と言います」と前置きし、まず、「スーパー堤防ありき、ではないのですよね?」と問い、「そうです」との回答を引き出しました。その後は次々と証拠書類を証人に確認させながら尋問を展開しました。

 「高規格堤防を前提とした説明はしていない」との証言については、区発行の「北小岩まちづくりニュースNo1」の証拠を引き、「幅広で頑丈な堤防・スーパー堤防事業を推進するとともに~」とあること、その裏面では「スーパー堤防とは?」と説明していること、また「同No.2」でも、Q&Aの中で「スーパー堤防とまちづくりはなぜ必要か」を掲載していることを指摘しました。これらは当然、当初から共同事業であると説明してきた証左に他なりません。スーパー堤防の必要性については、当該地区「18班まちづくりニュース」の中でも再三取り上げられています。

 次に「江戸川区スーパー堤防整備方針」の「はじめに」を引用。「~江戸川区が~その必要性を論じ、具体策を検討し~」「スーパー堤防整備に邁進する決意」としていることに言及、「この必要性については区の見解でいいのですね?」との問いに「はい・・」。 

 さらに、山口さんが陳述書の中で「共同実施の方がより望ましいということであり、共同実施でなければ事業の必要性や効果がないということではない」としている点については、2011年2月17日区議会一般質問での多田区長答弁を証拠として提出。「私は今まで自らやると言ったことは一度もありません。今もそう思っております」(P39)。また、翌18日も「もし私が、もし国土交通省がスーパー堤防に手を出さないのならば、区が単独でやりますということを本当に考えて、そしてそれを都にそういうことを伝えて、都市計画審議会の手続をしてくれと。そういうことであったとしたら、それは私が、今おっしゃるとおり、そういう事実を隠して、住民にも知らせず、裏取引をしていたんではないかと、そういうふうに言われても仕方がありませんが、私はそういうことを考えたこともありませんし、今までそのことを言ったこともありません。あくまで、国土交通省に従前の整備計画どおり、この地域についてはやってくれと。」(P65) 実はこの18日の質問者は私。事業仕分けでスーパー堤防事業が「一旦廃止」とされていたときで、同年5月の事業計画決定を前にしたタイミング。私にとっては議員としての最後の一般質問でもありました。当時の事情はこちらから。

 そして、福田弁護士は「区議会において単独で行うと言った答弁はないのですね?」と問い、山口さんは「はい」と答えることに。

  山口さんは、ご自身の陳述書に「国との間では、本件都市計画の立案時から、事務レベルでは、共同実施の可能性を念頭に置き~」と記しています。しかし、「事務レベル」などではなく、日頃の住民説明や区議会答弁、また、都市計画法に基づく重要なプロセスである江戸川区都市計画審議会など、どの場面をとっても、その「可能性」にとどまらず、終始「共同事業として実施」する説明をしてきたことは、紛れもない事実です。