理由なき5秒判決~江戸川区スーパー堤防取消訴訟不当判決

東京地裁前では、大勢の市民、メディアが判決結果を待っていた。原告弁護団の田村文佳弁護士と杉田敬光弁護士。

 

「原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」

 谷口豊裁判長の判決言い渡しはわずか5秒で終了。

 傍聴券抽選を経て、傍聴席を埋め尽くした市民を前に、単に結果を伝えるだけで、その理由を述べることはせず。何と不遜で不誠実な態度でしょうか。公開裁判でありながら、その結論はどう導かれたのかをいささかも語ろうとしない司法に対し、傍聴者からは「何度も傍聴に通ってきたのにショック」「民主裁判ではない」「結論ありきだ」と、とまどいや怒りの声が湧き上がりました。  

 閉廷後、判決文を検討した弁護団の報告によると、「棄却」の理由は次のとおり。

1.高規格堤防事業を行うのは江戸川区ではなく、区の都市計画や事業計画にはスーパー堤防整備が含まれていない。よって、スーパー堤防の当否を離れ、都市計画及び事業計画それ自体についての判断がなされるべきもの。

2.地区外との高低差に起因する問題点を解消する必要があることから盛り土するとの判断は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くとまでは言えない。

3.長期移転の住民負担については、被告の判断は社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くものとまでは認められない。

4 土地区画整理事業の計画を定めることは、決定する行政庁の広範な裁量に委ねられており、本件において逸脱・濫用はなく、違法ではない。土地区画整理事業が必要。

  原告側の具体の指摘についても、被告江戸川区の反論をなぞるかのような理由の列挙。

 さすがに、住民負担について、判決文には「精神的・身体的な負担は無視できないものがあると言わざるを得ない」とありますが、そのあとに続く記述には驚かされます。「本件地区外に転出することにより負担を回避する選択肢も用意されている」と述べているのです。これは、すでに江戸川区が行っている先行買収による「江戸川方式」ですが、土地区画整理法の定めを逸脱するものであり、まちづくりであるはずの「土地区画整理事業」を施行するにあたり、まちから出ていけばいい、とするこの判断は、法の番人である司法がなすべきことでは到底ありません。裁判長が必要とした「土地区画整理事業」とは、その区域内で、前にあった土地を新しい土地に一斉に交換すること=「換地」=土地を取り替えることなのですから。 

 本件事業は「江戸川区スーパー堤防整備方針」に基づき、スーパー堤防との一体事業として計画され、今日に至っていますが、事業計画そのものの内容ではないとし、スーパー堤防事業の当否については全く判断されませんでした。スーパー堤防事業が一時中断されていた際に策定された本事業計画において、区は「単独で盛り土する」としましたが、この時でさえ、「共同事業が前提。一体化をめざす」との説明を変えておらず、本計画があくまでも計画書としての体裁を整えるものであったことは明らかで、内実はスーパー堤防事業を睨んでのもの。スーパー堤防事業が本計画策定の重要要素であったことは明確です。

 事実はこれほどに明快。何のしがらみもない中学生らが、純粋な眼でこの10回の口頭弁論を見、素直に判断すれば、違った判決になることでしょう。行政が間違ったことをするはずがない―この前提のもとになされる判断。権力が権力に守られる構造。これで「三権分立」が成り立つのか。市民の救いはどこに? 執行停止の申し立ても却下され、即時抗告がなされました。本訴においても、数日中に控訴が予定されています。

 法廷では語られない、判決の真意を知るため、参加者であふれかえった報告集会では「事実と科学が顧みられる裁判を」「闘いはこれから」との声が上がっていました。 

判決要旨はこちらから。

弁護団声明はこちらから。

判決後、地裁前で取材に応じる弁護団事務局長・大江京子弁護士。

 

 

 

 
 
 

 

参議院議員会館では、90名の市民が判決内容の説明に耳を傾けた。国会議員も3名出席、今後もスーパー堤防事業についてただしていくと話した。