選挙後に届いた「公選はがき」の怪

   「公選はがき」の正式名は「選挙運動用通常はがき」。選挙告示日から投票日前日までに、有権者に対し、候補者をアピールすることのできる公式のはがきです。通常の切手の位置に「選挙」という印が押され、通常の受付日を示す消印ではなく、受け付けた郵便局名と告示日が記されます(公職選挙郵便規則2条及び第9条)。郵送料は「通常はがき」と変わらず150円ですが、すべて公費。出せる枚数は選挙ごとに異なり、東京都知事選挙では候補者一人につき、95千枚です。 

  このたびの都知事選挙において、江戸川区内で摩訶不思議なできごとがありました。ある候補者の「公選はがき」が選挙後の210日に届いたのです。しかも、そのはがきには配達した郵便局の附箋がついており、「このはがきは26日午前8時に当局に届いた。選挙後ではあるが配達する」旨、書かれていました。 

 この「公選はがき」を受け付けた新宿郵便局に確認したところ、「『公選はがき』は、一般郵便物とは異なる扱いとなり、特に『優先』という決まりはないが、『配達の速度を遅くしないようにする』ことになっている。今回の場合、6日中の配達が妥当であり、遅くとも7日には届くはず。」とのこと。大雪は28日でしたから、雪の影響でないのは確実です。「全国レベルの国政選挙では起こりうるかもしれないが、都内の選挙では考えられない」とも。 

 東京都選挙管理委員会は、「配達する時期については、公職選挙法に定めはなく、郵便局の責任において行うことであり、選管は関与する立場にはない」とのこと。では、「枚数の管理はどうするのか」と尋ねると、「郵便局から公費請求が来るので、それでわかる」。 

 しかし、その際、日本郵便株式会社から届く請求書は一本。つまり、オール候補者、オール東京の総額で請求され、明細はないのだそう。一人95千枚ともなれば、一度ではなく、何度かに分けて出される場合がほとんどでしょう。「A候補者、〇月〇日、〇〇枚、〇〇郵便局受付」といった明細が示されてしかるべきでは? このたびも16名の候補者がそれぞれ95千枚を出していれば、郵送料は7600万円にも上ります。ちなみに、参議院比例代表の場合は15万枚、衆議院小選挙区は35千枚。候補者の多い国政選挙では桁違いの郵送料になります。明細について、選管は請求しているものの、依然出されていない、との声も。 

 「公選はがき」を速やかに配達することは職場での当然のルールであり、十分注意している、ということなのでしょうが、選挙の公正を損なう、こうした事態を繰り返さないためにも、公職選挙郵便規則に改めて配達についても明文化する必要があるのでは? 規則第7条には、選挙期間が過ぎたら郵便物として差し出せない、との定めはあっても、配達については何ら記載されていません。

 別の区内郵便局管内でも、投票日当日に届いたとの情報が江戸川ネットに寄せられました。こちらは附箋でのお断りもなし。把握できているこれら「公選はがき」は郵政民営化を断行した元総理が応援した候補者のもの。まさか、原発を争点にさせない力学に、別の新たな力学が? そんなことはないでしょうが・・。区内当該局には徹底調査を求めています。