「信頼」のカギは情報公開と説明責任②
国及び国民の安全の確保に資することを目的に、昨年12月公布され、本年中には施行される「特定秘密保護法」は、秘密を守れば、国や国民の安全が守られるという考えに立っています。「防衛」「外交」「スパイ活動防止」「テロ防止」に関し、一定の条件のもとに秘密を扱うに際し、秘密を漏らしたり、外でその秘密を取得した人には厳罰を与えるということが法律の大きな特徴です。
一方、アメリカの機密指定制度は、法律ではなく、大統領令という行政命令としてあります。日本と同じく、行政命令で刑事罰はつくれないため、「スパイ活動防止法」など別の法律に罰則が定められています。そして、その秘密指定の目的は、大統領令の前文に次のとおり明記されており、秘密に対する両国の意識の違いを実感します。
「我が国の民主的原則が要求していることは、アメリカ国民が政府の諸活動について知らされているということである。また、我が国の発展は、政府内と政府から、国民への情報の自由な流通によっている。
それにもかかわらず、歴史を通じて、国防のためには、アメリカ市民、民主的制度、国土の安全や外交関係を保護するために、一定の情報を機密に保持することを必要としている。
安全保障の重要な情報を保護することと、機密指定基準と手順、確実で効果的な機密指定解除の正確で責任ある適用によって開かれた政府に対する責任を示すことは等しく重要である」
みんなが知っていることが大事、情報の流通が国家の発展につながる、秘密の保護と政府の管理責任は両方重要――こうした発想が持てない中で、日本では法制の検討の中で、以下のことが欠落していたと、国会で参考人として意見も述べられた三木由希子さん(NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長)は指摘されています。
① 秘密の領域であっても政府のアカウンタビリティを徹底するという発想がない
② 秘密指定と記録の管理、秘密指定解除と公開の仕組みが検討されていない
③ 罰則を強化すれば情報漏えいはしなくなるだろうという、昔の体育会的な発想であり、放っておくと腐敗するという自戒なし
そのため、特定秘密の保護、物理的・人的管理の強化、罰則の強化について、政府の権限は最大化されている一方で、特定秘密の管理、秘密の指定・解除、秘密指定文書の記録としての管理について、政府の説明責任は最小限となってしまい、法律外の統一基準とルールを持つアメリカの大統領令と大きく異なっているといいます。
アメリカ、イギリスの制度を視察された三木さんは、「どこもバラ色の解決策はなく、日本以上に闇の部分もあるが、改善が続けられている。日本でも、法律制定により、市民社会が委縮、自主規制することは絶対にあってはならない」とし、「政府に説明責任を果たさせる明確な法的枠組みが不可欠であり、政府が特定秘密の中で行う活動の監視機能を求め、法改正、廃案を目指すことと並行して、特定秘密に関する現実的な基準、監視機関の設置などに対する監視を行うことが重要」と話されました。
15日夜、安倍総理が「集団的自衛権」行使容認に向けての会見を行っている頃、生活者ネットワークでは、政治学者の杉田敦法政大学教授から、安倍政治の問題点も含め、お話を伺い、意見交換をさせていただいていました。「特定秘密保護法」の強行採決については、「あのような強引なやり方をする政権という印象が強く残り、今後にも影響があるだろう」とされ、やはり「機密そのものは必要としても、情報公開が先」と指摘されました。講演会の報告については、江戸川ネットのHPをご覧ください。