反対住民が堤防から抗議行動~スーパー堤防一体事業で初の直接施行、江戸川区で

 

堤防上から抗議する高橋さん。

  本日午前9時から、江戸川区による直接施行が実行されました。対象家屋はかなり広い範囲で高い塀に囲まれ、堤防上からも中の様子を窺い知ることはなかなかできない状況。その堤防には50名を超える反対住民や反対の意思を表明している区議会議員らが集まりました。「江戸川区は不当な直接施行をやるな!」「スーパー堤防事業は中止せよ!」の横断幕。土手の傾斜には「スーパー堤防建設反対!」「税金の無駄遣い!」の幟が張り付けられました。そんな中、残っている6軒のお宅では、洗濯物が干されたり、車いすの方が外出される、普通の暮らしの風景も見られました。

  午前9時、囲いの中では、所有者側の立ち会いもないまま、執行本部長による執行宣言がなされ、堤防上では、「江戸川区スーパー堤防問題を考える協議会」「江戸川区スーパー堤防取消訴訟を支援する会」の代表から「江戸川区の強権発動『直接施行』に強く抗議する声明」が読み上げられました。次いで、民主、共産、生活者ネット、無所属の区議会議員、そして都議会議員の抗議スピーチ、最後に住民代表で取消訴訟の原告団長でもある高橋新一さんの、怒りに震えながらの強い訴えがありました。 抗議声明文はこちらから。

9時前、整列する江戸川区職員。

「区との協議をしている最中だ。今日も話し合いがある。最後まで話し合いをすると言っておきながら、言っていることとやっていることが違うじゃないか。スーパー堤防がそんなに安全だと言うなら、まず区長や区の職員が住んでみたらどうだ。平井では民間企業の言うとおりにスーパー堤防をやらないじゃないか。強いものには弱く、弱きをくじく、江戸川区は何なんだ。われわれはここに今も暮らしている。なのに、これはどういうことか。区長が出てこい!」 

 土地区画整理法に定められた「直接施行」が、国の直轄事業であるスーパー堤防整備事業と一体的になされる区画整理で実行されるのは全国初。この強権力は、法的には、江戸川区が施行者となる区画整理事業のもとでなされていますが、実際、一斉に更地にすることを求められる直接の原因はスーパー堤防事業であることは明白です。

  何かと物議をかもし、課題山積のスーパー堤防事業はどこまでひとを苦しめるのか。ひとが普通に暮らす、当たり前の権利をどこまで奪うのか。超過洪水対策として、専門家の英知を結集して編み出された方策であったとしても、ここまで住民を追い込み、住民同士の対立に拍車をかけ、犠牲を強いる事態を生んでは、権力が侵してはならない基本的人権の侵害そのものであり、机上の理念や技術力に意味を見出すことはできません。

 だからこそ、国はまちづくり事業にまで過大な国庫負担金を投入し、自治体の財政負担軽減を切り札とする推進案を提示するしかないのでしょう。「区費ゼロ円でまちづくりができる」とは事業説明の中で区が再三言ってきたこと。行政の利益は一致しても、まちづくりの主役である肝心の住民不在のまま、自治体の判断を狂わせることになっています。何が最も大事にされるべきか、それに気付くことなく、まんまと乗ってしまった自治体の結末が、「行わない」と明言していた直接施行という最悪の今の状況と言えます。

一連の手続きの中で、江戸川区が建てた公示看板

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
●7/3 直接施行現場から (撮影は、ジャーナリスト・まさのあつこさん)