整合が取れない「懲戒」に係る規定~子ども・子育て新制度関連条例

 来年度から始まる、子ども・子育て新制度に関し、多くの自治体議会に出された関連条例は、内閣府のひな形に則るケースが多いとはいえ、自治体の独自色が表れている部分ももちろんあります。 たとえば「家庭的保育事業等の設備及び運営基準条例」について、4区(品川・杉並・世田谷・江戸川)2市(国立・小金井)の主な特徴を見てみると・・ 

 小規模保育事業A型(保育所分園型)の「設備基準」は、乳幼児1人につき、3.3㎡以上との規定が多い中、【国立】は5㎡以上。【杉並】はこの基準を規則に委任。【世田谷】は、条例に基づく耐震構造建築物であることに加え、耐震診断により基準以上であると確認された証明書類の提出を義務化(他の事業も同様)。【江戸川小金井・国立】は、保育を2階以上で行う場合、耐震基準などの要件を厳格に。「職員」について、【杉並】は施設長の設置を明記(B型も)。 

 B型(AとCの中間型)の「職員」基準については、【世田谷・杉並・江戸川】は保育士の割合を国基準より手厚く、保育従事者の6割以上に。【品川・小金井・国立】は、国基準どおり半数以上。【世田谷】は多くが設けた「保健師・看護師を一人に限り保育士とみなす」ことを明記せず。【国立】は、乳幼児あたりの保育士数について、多くが謳う「おおむね」を付けず。さらに、満1歳以上3歳未満の枠を、満1歳以上満2歳未満、満2歳以上満3歳未満と2つに分割し、計5段階に。 

 C型(家庭的保育に近い型)の「設備基準」はA型とほぼ同様。「職員」に関し、【杉並】は2階以上で保育する場合の定員を別途明記、1人の保育者につき2人以下、補助者と一緒の場合は4人以下、  などです。 

 これらはそれぞれ自治体の裁量によるものですが、同条例や「特定教育・保育及び特定地域型保育事業の運営基準条例」には、児童福祉法に抵触すると思われる箇所が。

 ①「家庭的保育事業等の設備及び運営基準条例」13条または14条、②「特定教育・保育及び特定地域型保育事業の運営基準条例」第26条には「懲戒に係る権限の濫用禁止」が明記されました。 条文内容は「~福祉のために必要な措置を採る時は、身体的苦痛を与え、人格を辱める等その権限を濫用してはならない」と、もっともなこと。

 この前提となる懲戒行為は児童福祉法47条第3項に規定されていますが、これが認められているのは、同法7条に定められた「児童福祉施設」の「長」のみ。そもそも懲戒権がない「家庭的保育事業」にこれを適用したり、懲戒権のある施設を明記した26条を、わざわざ50条で「特定地域型保育事業」に準用する、としては整合がとれません。多くの自治体がこの状況に。これはおおもとの内閣府の整理の問題と、それをそのまま採用した自治体側、両方の問題と言えそうです。(なお 「児童福祉施設」には、現在の11に加え、来年度から「幼保連携型認定こども園」が追加されることに) 

 4区2市の中では、唯一【杉並】が法に沿った判断をしています。①においては、「懲戒に係る権限の濫用禁止」を設けず、「虐待等の禁止」の条項に、事業者に対する同義の規定を追加、においても、50条の「準用」に、第26条を入れず、その26条でも「特定教育・保育施設」の対象を「児童福祉施設に限る」としました。法に定めた懲戒権の重みを重要視した判断と言えます。 

 ところで・・、本題には関係ありませんが、江戸川区の条例案、読みにくいですね。横書きにしてほしいと思っています。