「庁議」の公開・非公開~最高位の会議体はどうあるべきか?江戸川区は非公開

   江戸川区が1964年制定の「学童クラブ事業条例」を廃止し、児童福祉法を根拠としない「すくすくスクール事業条例」を制定することは、9月の第三回定例会直前、その議案が配布されるまで議員も知りませんでした。 

 子ども・子育て新制度に関連する条例案は多くの自治体で、9月議会に提出されましたが、世田谷区ではすでに8月、議員のみならず、誰もが知ることができる状況になっていました。区のHP上に「庁議」のサイトがあり、提出される条例案も含め、今後の行政運営に関わる重要事項が事前に公表されているからです。 

 「庁議」とは、自治体の中で最も高い位置にある意思決定や協議の場であり、首長の意思決定を支える会議体。自治体によって名称も、「庁議」(江戸川・江東・練馬・世田谷など)、「経営会議」(杉並)、「経営戦略会議」(板橋)、「未来戦略創出会議」(豊島)、「政策決定会議」(目黒)などさまざま。構成者は、首長・副長・教育長・会計管理者・幹部職員・議会事務局長などです。細分化した会議を置いている自治体が多くあり、江戸川区は「庁議」と「幹部会」の2つ、新宿区は「政策経営会議」「区政運営会議」「調整会議」といった具合です。

 この会議体がいかに開かれているかが、昨今、行政の「開かれ度」を測るポイントとなっています。

 基本的に自治体のHPに掲載されている例規集から、その設置根拠となる規則や要綱などを見ることができ、多くは、「設置目的」、その「構成」や「運営」の他、重要事項についての「審議」「協議」「総合調整」「決定」「組織の情報交換」などを定めています。

 板橋区の「庁議規程」には、第6条に「情報公開」の項目も設けられ、経営戦略会議の議題、審議結果及び審議経過の論点並びに連絡調整会議の議題及び協議の要点は、公開する」ことを明記しています。

 一方、江戸川区の要綱「庁議について」はこちら。第1条「目的」には、「区行政の基本方針、重要施策等を審議し、業務の総合調整を行うことにより、効率的かつ円滑な行政運営を図るため庁議を設ける。」とありますが、他は「構成」「開催日」「運営」「下部組織」「庶務」のみで、最高位の会議とは言え、そもそもこの会議体の内実がはっきりしません。

 私たち生活者ネットワークは今夏、都内32の自治体及び東京都について、この調査を実施しましたが、結果、この会議体は自治体ごとに異なり、情報公開の実態にもかなりの差があることが改めてわかりました。 

 まず、傍聴については、今回の調査対象ではすべて「不可」。埼玉県や新座市などは傍聴できますから、今後広がっていくものと思いますが、現状でも、「庁議に出された資料や議事要旨などをHPで公開している」ところは11自治体(下記参照)、「行政資料室で閲覧・コピーできる」ところ7自治体、「情報公開請求によって公開する」ところ15自治体など、何らかの形で情報提供、公開をしている自治体も多い中、江戸川区では一切非公開で、情報公開請求の対象ともしていません。 

 先の決算特別委員会で江戸川ネットの新村議員は「公開すべき」との立場で質問しましたが、「忌憚のない意見を言うには、公開は必要ない」との旧態依然の答弁。首長の意思決定を支える、政策決定の最高機関がどのような理由で、何を議論し、どう決定したかは、まさに住民生活に大きな影響を及ぼすものであり、区民との協働の観点から、また区政の透明性をはかるためにも公開の姿勢は必要です。まずは、議題の公開からでも始めるべきです。 

 とはいえ、会議体の中身に温度差があることも事実のよう。朝礼のような形になっている場合も。東京都は「セレモニー的なもの」だそう。しかし、最高位の場でこうしたことが行われていないとすれば、設置根拠にある「目的」は有名無実となり、一体どこでどのように重要事項が決まっていくのか、さらに疑問がわいてきます。

*今回の調査対象のうち、庁議の議題や議事要旨などをHPで公開している自治体・・・板橋区・世田谷区・豊島区・中野区・練馬区・国立市・小金井市・狛江市・立川市・町田市・東大和市