法を無視したスーパー堤防事業を問う~東京都都市計画審議会の役割

  国に、北小岩1丁目東部地区でのスーパー堤防事業の差止めを請求すると同時に、2度の移転や危険な盛り土上に強制的に移転させられることによる住民の精神的慰謝料として、国と江戸川区に対して損害賠償を請求した民事訴訟の第1回口頭弁論は、来年2月25日(水)午後4時から、東京地方裁判所103大法廷で開かれることになりました。 

今回はなぜ、行政訴訟ではなく、民事訴訟なのか。

行政訴訟は「行政処分」という公権力の行使が前提であり、自治体施行の区画整理事業の場合、「事業計画決定」や「仮換地指定」という「行政処分」がありましたが、国がスーパー堤防事業として行う盛り土は単に事実行為であり、「行政処分」ではないためです。 

  北小岩1丁目東部地区で強い反対の意思を持ち続けてきた方々は、その思いは変わらぬまま、今後の生活再建を考えなければならない岐路に立たされ、この新たな裁判を提起された方々も今月移転、今も現地に残られているのは80代のひとり暮らしの女性だけとなりました。そもそもスーパー堤防事業の必要性は全くないとの考えを持ち、パーキンソン病、心筋症、骨粗しょう症と3つの病気を抱えることから、傾斜があり移動に負担がかかる盛り土の上には住めない、と反対を続けてきました。この方も、12月上旬には移転されるといいます。その心境はいかばかりでしょうか。 

 区は、最終的なライフラインの撤去や整地工事などを1月9日まで行うとしていますが、国は同時進行で、12月中旬にもスーパー堤防事業に着手する方針です。6月に段階的施行(部分的な盛り土)の契約を国と交わした奥村組土木興業がそのまま行うといいます。 

 土地区画整理事業の現在の計画では「区が盛り土する」となっていながら、その変更をしないまま、国が盛り土するのは、法律違反ではないか、ということをかねてから指摘してきました。

 「国が盛り土する」ことについての、これまでの区の答弁は全く的を得ていないものです。さらに、東京都都市計画審議会において、まさにその点を盛り込んだ事業計画変更についての意見書が諮られている最中であり、意見書を提出し、口頭陳述を希望した市民15名のうち13名が10月3日及び5日、小岩区民館にて陳述を行い、12月には都庁での参考人陳述が予定されています。

 これは土地区画整理法に基く法定のプロセス。来年2月6日(金)の第208回東京都都市計画市計画審議会にて、市民や専門家の意見とこれに対する区側の見解などについて審査され、「国が盛り土する」という変更を認可するかどうかの答申が出され、それに基づき都知事が認可の判断をするのです。 

 認可権者である東京都が、区の自治権を理由に、自治体に意見できないのなら、それができるのが東京都都市計画審議会です。慎重かつ丁寧な審査がなされなければなりません。

 なお、区はここへ来て、28日と30日の両日、権利者対象に、土地の引き渡しが遅れることなどについて説明会を行っています。