その区画整理が生み出すものは「スーパー堤防」?~上篠崎一丁目北部事業計画書公告縦覧
上篠崎一丁目北部土地区画整理事業の事業計画書案が14日公告、縦覧に付されています。本事業は、江戸川区がスーパー堤防事業と一体的に施行する次なる区画整理事業。施行面積は東西約300m・南北300mの約4ha。主たる場所から300m離れたところに区が換地先として先行買収した土地もその一部に。70億6800万円の事業費は、2015年度から27年度まで12年間の資金計画として示されました。
事業の目的には「高規格堤防事業が予定されている」旨が入りました。この文言は、国のスーパー堤防事業と共同で行う「協定書」締結後につくられた平井七丁目北部地区の事業計画書には明記されましたが、事前に「協定書」が結ばれなかった北小岩一丁目東部地区の事業計画書には不存在(現在変更手続中)。盛り土の主体は国か、区か、という争点を生み出してしまった反省からか、今回の篠崎地区も「協定書」は未締結でありながら、「確認書」なる小技を駆使したことで、「目的」に明記したものと思われます。
平井及び北小岩では区域すべてをスーパー堤防化した上での区画整理でしたが、この篠崎地区の設計図によると、堤防上に住む場合と、その地先の平地に住む場合が出てきます。北小岩では、盛り土の危険性やスーパー堤防による権利制限により、堤防の上に住みたくない、という住民の意思が裁判にまで発展しました。スーパー堤防を高台と呼ぶならば、その先の平地は低地に。高台部分は崩落や液状化が、平地部分は低きに流れる大水の影響など、いずれにしても懸念はぬぐえません。480基の墓地は平地への配置が示されました。全体の換地案は、今後設置されるであろう土地区画整理審議会で決まりますが、土地区画整理法施行規則(第6条3)により、墓地については、公共施設や学校などと同様、設計図に示すこととされています。一方、特別緑地として現在のまま保全される浅間神社と、周辺の盛り土との調和はどう図られるのか、未だ示されず。
施行前の宅地地積35,609.60㎡から施行後の宅地地積26,418.17㎡を差し引き、それを施行前の宅地地積で割ると、減歩率は25.81%ですが、減価買収面積は8192.44㎡(買収額23億8400万円)あり、地積は27,417.16㎡で、減価買収後の減歩率は3.64%。整理前の宅地単価は29万1千円、整理後は30万2千円で、増進率はわずか3.8%。
土地区画整理事業は、減歩により宅地面積は小さくなっても、道路など公共用地を生み出し、まちの利便性と価値を高めることにその意味があるもの。ここまで先行買収を行い、その用地を投げ込むことで権利者の損失を補うとなれば、これほどの先行買収がなければ価値がない事業とも言えます。この増進率からも、実際の現況図と設計図を見比べても、区画整理事業としての有効性を見て取ることはできません。 ちなみに平井の減歩率は12.7%で増進率14.9%、減価補償金なし。北小岩は減歩率8.25%、増進率9%、減価補償金2億5961万円。上篠崎の施行面積は北小岩の3倍とはいえ、その減価補償金は10倍と桁違い。
この土地区画整理事業が生み出すものは、別個の事業「スーパー堤防」に尽きる?
*縦覧は28日まで。区役所土木部区画整理課(第2庁舎1階)及び篠崎地区まちづくり事務所(北篠崎2-26-7)で、8時30分~5時15分、閲覧することができます。土日はまちづくり事務所のみ。東京都知事への意見書提出は、2月11日(水)まで(消印有効。メール・FAXは受け付けず)。