憲法改正、そもそもの誤り⑦人権の歴史性・普遍性・永久性の否定

【96条 憲法改正の発議、国民投票及び公布】

≪憲法≫

①この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。・・

<草案>

100条 ①この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で、国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。

解説: 発議要件である2/3以上を1/2とすることは、立憲主義の民主主義化のおそれがある。立憲主義は国民の人権を守るためのものである。守られるのは国民すべての人権であるが、特に少数者の人権を主として守らなければならない。どんな多数決を持ってしても、やってはいけないことが人権の侵害である。つまり、民主主義から人権を守るのが立憲主義であり、立憲主義が民主主義の上位に位置する。多数者は民主主義の中で意見を主張できる。では、少数者の人権は誰が守るのか。2/3を過半数に変えることは、人権保障にとってはおそろしいことである。

【97条 基本的人権の由来特質】

≪憲法≫

この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

解説: 一言一句残すことなく、草案からは完全削除された。すべて受け入れがたいということ。人権の歴史性・普遍性・永久性を否定する、人権への挑戦的な姿勢である。 前文は「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」と、実質的立憲主義のサイクルを謳い、これに基づかない憲法や法令を一切排除する、つまり、変えたとしても認めない、としている。本条項の削除は立憲主義の価値を下げるものである。ちなみに、2005年時の自民党の改正作業では当然ながら残されていた。

*解説は、昨年10月27日(火)、東京・生活者ネットワーク「国政フォーラム」での神奈川大学・金子匡良准教授の講演から。