篠崎スーパー堤防「そんな説明じゃダメ」~関東地方整備局事業評価監視委員会での顛末・異なる国と区の説明
篠崎地区のスーパー堤防化について、本西委員が区議会予算特別委員会で引用した関東地方整備局事業評価監視委員会の議事録が公開されました(P4~)。資料はこちら。 委員から出される数々の疑問、質問に関東地整事務局が四苦八苦して答えるも、埒が明かず、家田仁委員長から飛び出したのがタイトルの言葉。
「全体の見通しもいい。準備も整った。だからやりましょう、となるんじゃないの?」
「便益みたいなものの計算のときに何か、普通の人が見たときに欺瞞に満ちてるなと思わないような、やっぱり努力はしてもらわないと。それから答えも、何かに決まっているからこうですよみたいなことではなくて、心にしみ入るような説明をしていただかないと、当委員会としては合点だというわけにはいかないんでね」
との委員長発言を受け、説明員が変わり、委員長に求められるストーリーへと修正されていき、結果、言うところの「合点」となっています。このプロセス、裁判長から水を向けられ、その意思に沿うような発言をしてことなきを得る、といったスーパー堤防差止訴訟の被告(国)の姿とも似通っているような・・。
本事業を正当化する理由として清水委員が発言したのが「逃げる場所がないところを何とかして確保する。これが、江戸川区の一番の要望」(P16)。しかし、篠崎公園地区で、3月11日開かれた国交省江戸川河川事務所及び江戸川区との対話集会では、当該地に暮らす方から「川から水があふれるとき、川につながるスーパー堤防に逃げるなんて、誰も考えていませんよ」との発言がありました。先の委員の発言には誰からも反応はなし。委員には、そこで生活を営む市民の立場にも立っていただかないと。
議事録には、地元とは異なる説明がなされている箇所も。
「今後、浅間神社の盛土についてはどういう時期にどういうふうにやるかというのはまだ何も言えないんですけれども、後々、盛り土していくというような形をとったほうがいいんではないかということで、今回こういう形で事業をさせていただくことにしました」(P17)。
説明の中では、ここが「特別緑地保全地区」として保全された場所、ということには一切触れられず、単に「調整がつかなかった」と言い、「いずれはここも盛り土して完成形にする」といった方向で委員に納得してもらっている、とも受け取れます。この制度って、豊かな緑を未来に継承していくためのものでは? 江戸川区の都市計画審議会でも、そのために、スーパー堤防計画地からはずす、との説明でした(下記議事録をご覧ください)。区が公開している事業データの位置図には、茶色でこれが明記されていますが、この委員会に出された資料にはそれが示されていません(資料P6参照)。ちなみに都内の特別緑地保全地区は区内10ヶ所、市内20か所。浅間神社は、明治神宮、上野公園と同様に、保全すべき地区との位置づけです。
浅間神社は、江戸川区最古、1100年鎮座する神社です。そして、すぐそばには、700年以上の歴史を刻む古刹、妙勝寺があり、スーパー堤防事業に今なお強い反対が示されている中、こちらは450基のお墓もろとも、区画整理事業の中での移転がなされようとしています。
スーパー堤防建設には、歴史的な社寺の保存という大きな問題までもが横たわることを委員に知られたくなかったのでしょうか? 国の説明に偽りあり、です。
最後、委員長は、「僕はスーパー堤防を、やはり甚大な災害を考えるときちんと推進していってほしいと思うんだけれど」と前置きし、「鬼怒川のときもそうだったけれど、何年かかったって少しも整備率が上がらないというようなので、もう仕方がないものねと言ってるような河川行政では、いつまでも仕方がないものねが続くわけであって、さっき大野先生が言ったような手法も含めて、どういうふうにしたらもっと素早く進むのかということも勉強課題として考えてもらわないと。今回も継続ですからいいようなものだけれど、新規に考えていくときも、常にやはり批判の対象になりますよ。さっき費用対効果の話や、あるいは地盤、地質調査の今後の取り組みもありましたので、次回とは言わないけれど、いずれこういうものをもっと円滑に進めるためには、関東の河川部隊としては一体どういう知恵を出そうとしているのかというのをまとめて、それで皆さんにお知恵を拝借するようなことをやったらいかがですか。」と締められました。
その知恵を授けてくれる学習会が9日(土)13時30分からタワーホール船堀にて開かれます。「元建設省土木研究所次長からの提言『鬼怒川決壊に学ぶ』本当に安全な堤防とは」。事業評価監視委員会の先生方、国交省の方、区当局の方、市民のみなさん、どなたでも、どうぞご参加ください。ご一緒に考えましょう。
●平成19年度江戸川区都市計画審議会議事録より「浅間神社 特別緑地保全地区指定についての区の説明部分」
都市計画課長:特別緑地保全地区指定にかかわる見解ということで、読み上げますけれども、本地区は浅間神社の境内地で、良好な社寺林を有しており、昭和32年にその一部が東京都市緑地第13号江戸川緑地として決定されました。先ほどスクリーンでごらんいただいたとおりであります。当神社は区内でも古く、以下については先ほどご説明した部分でございますけれども、こうしたことから歴史的、文化的な価値も含め、重要な社寺林を将来にわたり保全するため、都市計画緑地であった部分のみならず、参道を含めた境内地に拡大して特別緑地保全地区として決定するものでありますと。またスーパー堤防事業との整合については、スーパー堤防による盛土の計画高よりも本殿は高いために、その周辺まで盛土をすれば影響範囲を極力抑えることができると。保全を図りますと。なお、影響範囲については復元に努めますということであります。さらにこの指定におきましては、浅間神社の賛同もいただいておりますと。