スーパー堤防の効率的整備を検討する非効率な検討会
国交省による「高規格堤防の効率的な整備に関する検討会」が、「とりまとめ骨子(案)」を出しています。24日(月)、国土交通委員を務められる山添拓参議院議員が国交省に聞き取りをされる場に、北小岩、篠崎地区の住民の方々とともに同席させていただきました。(こちらもどうぞ)
スーパー堤防の整備率はこの30年間でたったの3.3km、率にして2.8%。今後、対象5河川での計画延長120kmの整備を終えるには1000年を要する計算です。この数字は、誰が見ても、課題が多すぎて進まない、もはや持続不可能、との判断がなされて然るべき状況と言えます。しかし、北小岩でのスーパー堤防の地盤強度不足発覚直後立ち上がったこの検討会は、5月と6月、わずか2回の開催で「とりまとめ骨子(案)」を発表。御用学者と思しき専門家の方々によるその内容は、これまでの「絵に描いた餅」のスキームをさらに上書きしたものに過ぎません。
何よりも驚くのは、すすまない理由である重大な課題に一切向き合っていないこと。「効率的整備」の検討というからには、まずは評価が必要。これまでかけたコスト、かけた時間、現実の整備状況、費用対効果、計画地の住民に与える人権問題、基準の地盤強度を欠く施工技術、パートナーの自治体が抱える問題。積み重なったこうした負の要素を、まずはしっかりと共有し、真摯に分析すべきです。しかし「あくまでも方策のとりまとめであり、具体の数値まで言及しない」「住民の負担や強度不足は扱っていない」と。
説明された水管理・国土保全局企画専門官は、冒頭「岩手や北海道など、これまで手が回らなかった河川でも大規模水害が起きている」と、検討会立ち上げの経緯説明で言及。
「各地でそうした水災害を引き起こす原因のひとつが(首都圏での)スーパー堤防ありきの姿勢ではないのか」「委員はスーパー堤防地の現地視察は行っているのか」「検討委員の選定基準はあるのか」との問いには「・・・」(無言)。
「スーパー堤防ではなく、耐越水工法を採用すべきではないか」については「技術が確立されているのはスーパー堤防だけ。耐越水工法の研究はしない」と、強度不足を引き起こす程度の低い、杜撰な技術への反省はなし。
「パブリックコメントは行わないのか」については「予定はない」と、住民無視の姿勢は変わらず。
「一部区間の整備でも堤防の安全性が格段に向上するというが、その周辺は破堤の可能性のある通常堤防であり、そこが破堤した場合、スーパー堤防にも当然被害が及ぶ」
「避難場所ともなるというが、破堤の可能性のある川に面したところを盛り土して避難場所にするなど、東日本大震災で学習した避難の鉄則とは真逆」
など、とりまとめ内容への反論が相次ぎました。もちろん「検討委員を変えるべき」との意見も。諸課題の分析もなく「河川管理者(国)が突っ走るくらいの勢いでやれ」(第1回議事録より)などの乱暴な意見を見ればそう思うのは当然。
第3回目の検討会は未定。この検討会、にわかにHPに傍聴案内がアップされ、中1日程度で締め切り。ようやく申し込めたにしても、お断りの連絡が来るという始末。定員は数人だそうで、報道陣も含めている、部屋が狭いことがその理由。市民でどなたか傍聴できている人はいらっしゃいますか? この辺の効率性をまず検討してほしい。
*北小岩1丁目東部地区の現状については、本西みつえ のHPをご覧ください。