人が住むことを無視したスーパー堤防の実態~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審第2回口頭弁論①
控訴審第2回では、控訴人側から3人の意見陳述がありました。
控訴人のおひとり、宮坂健司さんの陳述は、生まれ育ち、ご家族を持ち、終の棲家を建て、ご両親を見送られた、その大切なふるさとが変貌することへの無念、庭木の手入れや川辺の散策をし、趣味の音楽にふける、そんな当たり前の生活が奪われ、心身の健康までをも奪われたことへの無念を語ることに始まり、次のように心情を吐露されました。
ここを堤防にしていいですかと国から直接言われたことはありません。堤防の上に住むことになりますが、それでもいいですかと国から直接言われたことはありません。堤防にしていいですと言ったことはありません。堤防の上に住むことになってもいいですと言ったことはありません。すべては区が私の権利を制限したあとに区が国と共同して行っている事柄です。
平成29年2月20日に私の仮換地指定地で地盤強度が平米30kN(キロニュートン)に満たない箇所が見つかったと伝えられました。区の職員が測定結果を私に説明しました。既存地盤にも堤防盛り土にも強度未達の箇所が見つかっていました。説明には国の職員も同席していました。勝手に人の土地を区画整理に持ち込み、その上、何の承諾もなしに堤防の盛り土工事をした結果、不具合が生じたので説明すると言っても、一体何のことでしょう?
堤防の盛り土工事は定めに則り、設計を十分に行い、万全の工事体制のもとに実施されたものであったとされ、江戸川区は平成28年3月末日に完成盛り土を受領したのです。江戸川区は一体何を確認して受領したのでしょう。
一方、国は地盤強度の確認方法を十分に確認しておけば、地盤の強度が不足するようなことは起こらなかったと言います。本当にそうでしょうか?
国には、最初から、人が住んでも安全な地盤の強度を確保するという認識はなかったとしか思えません。盛り土の強度に関する懸念は施工前から多くの指摘がありました。国は河川区域ではない区画整理予定地での地盤調査を地権者の強い要望のもとに2箇所のみ実施していました。けれども、引き渡し直前になって、高規格堤防盛り土の直下の既存地盤に強度未達の箇所が見つかったのです。これは、事前の調査が不十分であり、軟弱層の位置と分布が認識されていなかったことを意味します。
さらに、サーチャージをしたにも関わらず、既存地盤の軟弱層の強度は平米30kNすら達成していなかったのです。このことは、高規格堤防の設計や計画に瑕疵があったということです。
地盤の強度不足は、既存地盤の中だけではなく、新規の盛り土の中にも見つかりました。広い範囲を工事するのだから、ばらつきが生じることは止むを得ないと国は言います。
そんなことでは、その上に住んでも良いと言われても冗談ではありません。こんなところに住んでもいいよと言われても、何をおっしゃっているのでしょうか?と言わざるを得ません。 (続く)