明かされない地盤強度不足の原因を追及~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審第2回口頭弁論③

次に、小島延夫弁護団長が、第1回期日で指摘した地耐力不足問題について、国から出された回答書に対する反論、そして証人尋問の必要性について陳述されました。

控訴人らは、地盤調査データ、盛り土工事の施工方法及び盛り土材料に関する文書、今回の地耐力不足が生じた原因について調査・検討・分析した文書、今回の対策方法書、その他対策に関連する文書の提出を求め、かつ、原因、ボーリング調査を網の目状に実施しなかった理由、今後の安全性確認方法について、釈明を求めていました。しかし不十分な回答が多いとのことで、誠実な対応が改めて求められました。

回答書の最大の問題点は、今回の地耐力不足の原因について回答していないこと。
添付されたのは第31回まちづくり懇談会で参加者に配布された資料のみ。これに記載されているのは、強固層があったため調査できなかったところをさらにボーリング調査した結果、60地点で強度不足が確認され、75区画中26区画で対策が必要と判断したこと、その調査結果、強固層の理由、対策工法、補償、安全性の分析、現場見学会、相談窓口案内であり、肝心の、強度不足が生じた原因はひとことも記載されていません

小島代理人はまずその地盤の上に住む人々の生命や身体の安全にかかわる問題であり、あまりに不誠実であると指摘しました。

国の主張は「本件盛り土工事における盛り土の施工は適切に行われていたものの、地権者への土地の引き渡しの条件として示した宅地としての地盤強度及び調査方法、調査時期等については、あらかじめ十分に確認していなかったことから、今回の事態となった」というもの。

しかし、すでに判明している事実に照らしもともとの地盤が予定していただけの強度がないことからは、施工前の調査不足があり、地盤の状況に適切に対応した工法の選定がされていない問題がある。また、盛り土自体の強度不足では、盛り土の施工が適切に行われていなかった問題がある。どちらにしても、調査を含め、工事は到底適切に行われているものではない。にもかかわらず『盛り土工事は適切だった』とは何をもって言えるのか。被控訴人国はまずその点を明らかにされたい。宅地としての地盤強度及びその調査方法、調査時期等を十分確認していれば、今回の地耐力不足は発生しなかった(答弁書記載)となぜ言えるのか。その点も明確にされたいと強く主張されました。

さらに、国が宅地地盤強度や調査法等について十分確認していなかったと自認している点を追及。

実は、平成27年10月2日及び4日開催された「第25回まちづくり懇談会」、さらに翌28年3月18日及び20日開催の第27回同懇談会において、国及び区は「地盤強度は1平方メートルにつき30キロニュートン以上であることを確認した上で土地を引き渡す旨、口頭説明した」と答弁書に記載しています。いずれも、国が区に盛り土が完了したとして土地を引き渡す前のことです。

「宅地地盤強度や調査法等について十分確認していなかった」のに、「過去に2度、宅地地盤強度の基準値確保について地権者に説明している」事実。

小島代理人は国の主張を「全くのデタラメだ。通常のことばの意味では全く理解不能。」と切り捨て、「地耐力不足が生じた原因、その調査・分析について、改めて誠実に対応すべき」と強く求められました。

また、裁判後の報告集会では「長年弁護士をやっているが、ここまでいい加減で不誠実な対応は経験がない」とも。

国会のみならず、司法の場でも、いかに公権力が国民をなめきっているかが露呈しています。

なお、私が江戸川区に対し情報開示請求した「盛り土完了後、国から区へ土地が引き渡された際、双方が盛り土の安全を確認しあった文書」は「不存在」であることがわかっています。

裁判についてわかりやすく解説される小島延夫弁護団長。