正しい判断のために証人尋問を~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審第2回口頭弁論⑤
控訴人から証人申請されているもうおひとり、嶋津暉之さん(元東京都環境科学研究所研究員)は、治水対策としてそもそもスーパー堤防事業が必要か、についての証言が求められています。これに対し、被控訴人国は「証言の必要はなく、過去に提出した2通の意見書以外に新たに立証すべき事項があれば追加の意見書を出せば足りる」として、お2人同様、やはり却下を求めています。
嶋津さんが今回新たに意見書に盛り込んだ主なポイントは、
・情報開示請求で求めた平成24年度の河道整備状況によると、本件整備地区は江戸川沿川で最も水害の危険性が小さい
・国は、現在の技術ではスーパー堤防以外に越水に耐えられる構造は確立されていないと言うが、「フロンティア堤防」や「アーマー・レビー」という技術が、国交省自身により開発され、実施されている
などです。
三番目に陳述に立った西島和代理人は、
「そもそも、控訴人らが人証調べを求めているのは、意見書に書かれていない事項を立証するためではない。『本件スーパー堤防の整備を進めることで、利根川・江戸川水系全体の治水安全度は向上せず、むしろ低下する』といった控訴人らの主張について、証人嶋津が情報を収集し、分析し、評価した、その結果を口頭で提出するとともに、その過程を尋問することによって証人嶋津の意見の信頼性が高いことを立証したい趣旨である」
そして、
「尋問が実施されることにより、意見書の内容がよく理解され、一審判決のように『超過洪水』などの専門用語を誤解したまま判断を述べるという失敗が繰り返されずにすむことが期待でき、意見書の信頼性を効率よく点検することも可能となる」と述べられました。(前回の主張をご参照ください。こちらから。)
第2回期日では、控訴人側3人の陳述が終わるや、被控訴人代理人に何やら動きが。いつもと異なる被控訴人側の態度に都築政則裁判長が驚いた様子で「何か陳述しますか?」と問うと、「回答できるものは特にございません」と早口でひとこと。「あ、そういうことね」(それが言いたかったのね、というかんじ)と軽くいなされていました。
控訴人側は、今回提出された被控訴人の回答に対する準備に2ヶ月を要するため、10月2日までに書面を提出するとし、第3回期日は10月10日(火)午前11時、東京高等裁判所101大法廷 で行われることになりました。3人の方々の証言をぜひお聞きしたいものです。