国の不開示に対し「文書提出命令」決定~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審

北小岩1丁目東部地区再建の模様(2月撮影)。現在も約半数の区画が再建未着手。地耐力対策工事範囲は面積ベースで全体の約半分に及ぶ。

地耐力不足発覚前後、国(及び江戸川区)が実施したスウェーデン式サウンディング試験及びボーリング調査において、非公開とされてきた調査地点。控訴人が、それを特定する記載部分、及び当該地点が図示された図面の提出を求め、文書提出命令の申し立てをしたところ、国は必要ないとする意見書を提出していました。

両者の主張を検討してきた東京高等裁判所第19民事部の都築政則裁判長、石垣陽介裁判官、野本淑子裁判官は、27日、国の主張を退け、控訴人申し立てのとおり、国に文書の提出を命じました。

行政を相手取った裁判においては、行政の言動に誤りなし、との姿勢が常に貫かれ、ここまでのところ、スーパー堤防裁判も例外ではありませんでしたが、ようやくまっとうな判断がなされたことを喜びをもって受け止めるものです。

裁判所の判断は以下のとおりです(抜粋)。

・(国は)対策工事によって、地耐力不足は解消したので、証拠調べの必要はないと主張するが、盛り土された土地全体の地質の構造が明らかになっていない段階で、どの地点かが特定されていない複数地点のデータのみを比較し、その地点の地耐力不足が解消したというだけでは、その地点を含む土地全体について評価することは困難であり、申立人らが主張する液状化、不同沈下及び斜面崩落などの危険性の有無について判断することはできないと言わなければならない。したがって申立人の主張は採用することができる。

・(不動産登記法、地価公示法、災害対策基本法を挙げた上で)土地に関する情報は、国民の生命、身体及び財産に関わるものとして、公共性を有する面があることは否定できない。調査地点特定により土地全体の地質の構造を明らかにすることは上記危険性の有無を判断する上で必要なことである。特に本件では複数の地点で地耐力不足が生じたことが判明したのであり、その原因と対策工事の結果を明らかにして、本件盛り土工事がされた土地全体の評価を行うことが必要である。そのため、その土地内の各所有者個人の私人の情報(地盤調査結果データ)であっても、各土地のデータが相互に関連して安全性の有無が判断されることになるから、国民の生命、身体及び財産に関するものとして公共性があると言うべきである。また、調査地点が明らかになったからといって、それは本件土地全体の地質構造を明らかにして、各土地の安全性が確保されているかを把握するために必要なことであるから、当該地権者間で直ちに信頼関係が損なわれ、今後の公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すことになるとは考え難く、調査地点に関する情報は私人の実質的な秘密には当たらないというべきである。(国は)土地の調査地点に係る情報は、行政情報公開法の不開示情報に当たるものとして取り扱っていると主張するが、行政情報公開制度は民事訴訟法上の文書提出命令制度とは趣旨、目的を異にするものであるから、本件各文書を不開示情報として扱っているとしても、上記の判断を左右するものではない。本件各文書は、同法220条4号ロに定める「公務員の職務上の秘密に関する文書」には該当せず、その他除外事由に該当する事実を認めるに足りる証拠はない。(国の)除外事由に関する主張は採用することができない。したがって、文書提出義務はあるといわなければならない。

控訴人の申し立て理由がすべて認容され、国はひた隠しにしてきた調査結果文書を提出することになりました。

当地に設置された沈下盤。精密な計測、適切な公表が望まれる。