地盤調査は適切に行われたか?宅地利用整備検討会は?~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟第6回控訴審報告④青野証人反対尋問

次に、青野証人に対して、小島延夫代理人から反対尋問がありました。

まず、治水面の反対尋問に関連して質問。

「『ゼロメートル地帯では被害が甚大。地盤が低い場所では高い避難場所が必要』との発言があったが、本件地区はゼロメートル地帯なのか?」

回答は「ゼロメートルではない。地盤は高いほう。」というもの。当地区はAP+3mであり、発言内容が事実と異なる点についての指摘がなされました。

そして、本題の地盤問題。

「本件高規格堤防盛り土をする前に、既存の地盤の状況について調査をされたか?」には「ボーリング調査をした。」本件地区内についての事前のボーリング調査は2点のみであることが確認されました。(従前の6ヶ所は堤防上)

「古地図を調べて、湿地や水田、水路の存在などの調査はされたか?」には、

治水地形分類図で調査は行っている。当地は自然堤防に分類されている。古地図では直接やったかどうか確認できていない。お答えできない。

次に、日本建築学会が作成した基本的なガイドラインで、公的基準に準じて実務的に尊重されている「小規模建築物基礎設計指針」(2008年)を見せ、「スーパー堤防はその上に戸建住宅などの小規模住宅をつくることを想定しているが、こうした指針はお読みになったことはあるか?」と質問。

この中には、以下についても明示されていることが紹介されました。

・敷地地盤は事前調査(資料調査・現地踏査)により適切に評価する

・近隣の既往資料により、地盤状況(土質・地質・強度・地下水位)を調べる

・河川沿いに発達する自然堤防背後の低平地を後背湿地と呼び、軟弱な沖積地盤で建物の基礎地盤としては支持力不足や沈下が問題となることが多い

・水田に利用されることが多く、沼沢地が残っていたりすることもある

「過去の地図調査はしたのか?そういうことをしたという記録はあるのか?あなたは見たことがあるか?」との問いに、

証人は「やったかどうかお答えできない。私自身が実務担当者ではないので、明確に答えられない」と。

続いて、元地盤についても地盤強度不足となった箇所があった事実に関連し、双方から出された断面図から、N値がゼロに近い値があることが小島代理人より指摘されました。

これについて問われると「実務担当者は認識していたのではないか。

設計業務報告書を見ているかについては「経緯の中で十分ではないが見た。」とし、「本省では見ていない。各河川事務所でいろんな検討業務を行っており、本省にはすべてはない。」

「(そもそも当初から)地盤改良すべきだったのではないか?」との問いには、

当時の担当ではないので、明確にお答えできません」。

最後は、昨年8月、関東地方整備局が行った「宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会」について。

小島代理人からはまず「あなたが担当者ですね?」と確認があり、「地盤強度不足発覚から1年半も経ってから、宅地として耐えられる高規格堤防の検討が行われたが、本件盛り土工事を開始する前にはこうした検討会が開かれなかったのか」と疑問が呈されました。

さらに、4名の委員について、それぞれの専門について質問。「委員長の清水義彦さんは河川工学、中村英夫さんは都市計画。」との回答。「残るお二人は法律家。戸建て住宅などの建築の基礎設計の専門家をだれも入れなかったのはなぜか?」との問いには、

今後やるべき調査内容、どういう段階でどういう調査をするかを検討する委員会である」との回答にとどまりました。