宅地を考慮した施工管理はなされたか?~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟第6回控訴審報告⑤金澤証人主尋問
最後は、平成28年4月1日から平成30年6月30日まで、国交省関東地方整備局江戸川河川事務所長として、本件盛土工事の管理及び地耐力不足発覚後の対策工事の現場責任者だった金澤裕勝さん。まず、国側の森智也代理人から主尋問がなされました。
・「基準としている30kN/㎡という地盤強度とは?」
「木造住宅、鉄骨3階建てで、基礎杭を用いた構造、べた基礎、布基礎、いずれの基礎でも建てられる強度」であり、
「約束した宅地としての基準に満たないことがあれば直ちに危険か?」との問いには、「直ちに危険ではない」と。
・「どのように強度の確認をするのか?」については、
「盛り土を施工した上に30kN/㎡の地盤強度が発生する3階建て住宅相当の荷重分の重しをするサーチャージ盛り土をし、沈下観測をすることで地耐力が確保できると考えていた」
他に、江戸川区の調査により判明した地盤強度不足を知った時期(平成28年12月)、国も調査に加わった時期(平成29年1月)、その結果を踏まえた対策工を示した時期(同年3月)、また、スウェーデン式サウンディング試験についてや強固な層、対策工法や地盤改良材などについて語られました。
スウェーデン式サウンディング試験は、先端がキリ状になっているスクリューポイントを取り付けたロットに100kgの荷重をかけて地面にねじ込み、25cmねじ込むのに何回回転させたかを測定して地盤強度を計測する方法。
金澤証人は「スウェーデン式サウンディング試験は、戸建てでは画地ごとに計5点行うのが一般的。画地をまたがって家を建てない限り問題はない」と証言したものの、「スウェーデン式サウンディング試験による調査の特性を把握していなかった」とも述べていました。
中層混合処理工法については「セメント系の物質を土と混ぜながら前の土より固くする。改良材の中を水が流れにくくなるが、水を通さないということはない」
対策工完了後は「強度を確認し、区に引き渡した」と。
いずれもこれまでの説明以上でも以下でもありません。
スーパー堤防の上には家を建て、人が住むことになっており、堤防としてだけでなく、宅地としての強度が確保されることは必須であったはずですが、スーパー堤防施行者にはその認識が欠落していたということ。結果、宅地強度を確保するための調査及び施工管理がなされていなかった、と言えないでしょうか。この期に及んで「宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会」が持たれたことがその証左?