地盤強度不足、区の工事に言及~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟第6回控訴審報告⑥金澤証人反対尋問
金澤証人への反対尋問は小島延夫代理人からなされました。
375地点でのスウェーデン式サウンディング試験の結果、地盤強度不足が盛り土のみで生じた箇所が5地点、元地盤のみが49地点、両方ともが6地点であり、元地盤での不足箇所が計55件と相当多い点に着目。
「元地盤はどういう状況だったのか調べられたか?」との問いに「盛り土前にボーリング調査をした」
そして、青野証人同様、「『小規模建築物基礎設計指針』を読んだことがあるか?」との質問には「私が着任してからは読んでいない」と。
「元地盤について合計55件もの地耐力不足が明らかになったのだから、過去の状況を古地図で調べることはしたと思うがどうか?」との問いには、まず「私は盛り土工事後に着任した」と。その上で「いかに早く地権者に土地を返すかが私の使命」とし、「古地図とはどういったものですか?何のためにやるのでしょうか?」と逆質問。
「実際、本件地区の場合、昔の地図を見ると、水田や水路、ため池があったりしたようだ。きちんと施工したはずの土地で地盤強度不足が起きたのだから、対策工を行う立場であれば、元地盤について過去の履歴を調べたり、古地図を調べるなどはすべきではないか」「地盤調査についてもポイントしかやっていない」など、地盤調査への指摘に対しては「意味がよくわかりません」。
N値ゼロの断面図の証拠書類を示され、数値の確認を求められると「(ゼロと)見えなくもない。判断できない」。
さらに、「ポイントごとの沈下測定値が5cm~22cmまでバラツキがあり、均等ではない」ことが具体に指摘され、地盤強度不足の原因に話が及ぶと、
「何で強度不足が出たのか、技術者として気になるところ」とし、「これはあくまでも個人的な考えだが」と何度も言い置いた上で、江戸川区の工事に言及。
「盛り土の最終段階で地中に支障物が見つかり、区が掘削して撤去し、区が埋め戻したことがあった。このとき、埋め戻し、締め固めはどのようになされたのか・・。」と、地盤強度不足への影響を懸念する発言がなされました。
区による支障物撤去工事自体はすでに公表されている事実であり、そのように考えたとしても不思議ではありませんが、「個人的」見解とは言え、この件が地盤強度不足との関連で公の場で語られたのは初めてのことです。
小島代理人は盛り土の中に自沈層があることも指摘。「盛り土の中に11ヶ所も発生したのはなぜか?」と質問。これには「明確に答えられるものを持ち合わせていない」と。
さらに、強度不足発覚後に実施したボーリング調査のデータが147もあることから、「これを活用して全体の地層についての断面図を作成したか?それがあれば、どういう状況で軟弱層が生じたのか分析できるのでは?そのような分析はしていないのか?」と質問。
金澤証人は「つくっていない。必要がなかったからだと思う」と答えていました。
■江戸川区の支障物撤去工事は平成28年。これに関する区議会建設委員会議事録はこちら(区画整理課長説明P33、質疑P38~ )。盛り土工事に伴い「蔵前橋道路の土留めの擁壁を撤去している際に出てきた。道路地盤面4m下から、直径80cmのヒューム管1本、60cmが2本。」なお、課長答弁では「いろいろ古い地図や戦前・戦後の古い地図、それから航空写真などを調べていくと・・」と話している。