スーパー堤防が奪ったふるさと・平穏な日々~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審結審①
2014(平成26)年11月12日、国の直轄事業「スーパー堤防(高規格堤防)」の差止めを求めた全国初の裁判「江戸川区スーパー堤防差止等請求訴訟」の控訴審(都築政則裁判長)は本日、弁論が終結されました。2017年1月25日の一審判決後、家を建てるための地盤強度が不足するという致命的な事実が発覚。事業の根幹を揺るがす新たな重大課題が明らかになったことから、控訴審での弁論期日は実に7回を数えました。この裁判への区民、国民の関心は高く、一審、二審とも常に大法廷が使われ、今日も80名ほどの傍聴者が駆け付けました。
判決は、7月16日(火)午後4時、東京高等裁判所101号大法廷 にて言い渡されます。
結審期日では、控訴人側から5名の陳述がありました。対して、被控訴人・国は何も語らず。準備書面の提出もなかったといいます。
控訴人の宮坂さんは、
「2017年9月、江戸川区から、仮換地の使用収益開始後は『仮換地に建物を建てるなど自由に使用することができる』と通知された。現地に行くと、無機質な何もない土地が広がっていた。『自由に』と言う私の土地は、盛り土により高く盛り上がり、変わり果てた姿になっていた。
ぽつんと立っている掲示板のようなものに紙が貼ってあり『河川法第6条第2項の区域指定』のことが書いてあった。『高規格堤防特別区域』のことが『高規格堤防』という文字をひとことも出さずに書いてあった。私が住んでいたのは『河川区域』ではなかったが、戻ってきたのは『河川区域』だ。あなたの土地を堤防にしていいですかと国から聞かれたことはない。私もいいですよ、と言ったことはない。すべては江戸川区が(区画整理事業により)私の権利を制限した後に国と共同で行ったことだ。
仮住まいの家賃補償はあったとしても、私の土地はこれからもずっと堤防の上だが、これに見合う保障は提示されていない。一旦盛り土した土地を既存地盤も含め、掘り返して強化剤を混合させ、固めた地盤の上にある土地だ。地耐力不足の問題は設計や施工の瑕疵にあたる。
住んでいる人の権利をなきものにしていることを認識せず、拙速で強引な事業を推進したことは地権者に必要をはるかに超えた負担を強いている。住民の生活を根底から覆した本事業は、十分な賠償が必要である。今の制度で問題がないと言うのなら、制度自体が誤っているのだ。住民のための事業と言いながら、住民は置き去りでないがしろにされている。
ふるさとを奪われ、返された土地は『河川区域』で、さらに当初の設計とは異なる性状の土地となり、家族が傷つけられ、土地の活用方法を見いだすことは困難だ」と語り、
「私はもうふるさとの土地をあきらめるから、国でも区でも私の土地を買いあげてほしい。明るく、はつらつとしていた家族をどうしたら取り戻せるのか教えてほしい」と訴えられました(陳述から抜粋)。
陳述の中では、大切な家族が本事業によって深く心身を病み、命に関わる事態に追い込まれたことも切々と語られました。