注目すべき「鬼怒川水害裁判」と「石木ダム工事差止訴訟」

河川やダムに関わる裁判が各地で続いています。

「鬼怒川水害裁判」は、2015年9月の関東・東北豪雨による鬼怒川の氾濫は、国の河川管理に不備があったため、として2018年に提起されました。浸水面積は40k㎡に及び、浸水家屋は8000戸という甚大な被害をもたらし、災害関連死を含め15人の方が命を落とされました。

この裁判では、今年8月、画期的な進行が行われました。

「現地進行協議」と呼ばれるもので、水戸地方裁判所の阿部雅彦裁判長ら3人の裁判官が原告及び被告ら関係者とともに現地視察を行ったのです。

当日は、原告が、決壊前の堤防高は国の基準を満たしていなかったと主張する常総市三坂町の堤防決壊現場や、砂丘林が削り取られて越水した若宮戸地区の現場を視察。

これを経て、次回期日は11ヶ月ぶりに、9月27日(月)水戸地裁下妻支部にて午前11時開廷。10月8日、29日、11月12日(いずれも金曜)には、午前10時から証人尋問が行われ、来年2月、結審となる予定です。「スーパー堤防裁判」でも、原告側は裁判官に現地視察を求めましたが、ついぞ実現することなく終わった経緯があります。

また、長崎県では「石木ダム工事差止訴訟」(森冨義明裁判長)の控訴審判決が福岡高等裁判所にて10月21日(木)14時から101法廷にて言い渡されます。半世紀前に計画された「石木ダム」は、佐世保市の水不足を解消するという利水目的においても、川棚川の治水目的においても意味のないことが明白となっています。経緯はこちらからもどうぞ。

地元では、13世帯の方々が今も座り込みを続け、立ち退きを拒んでいます。建設に値する理由がない以上、地元住民の人権が侵されることなどあってはなりませんが、県は話し合いを続けるといいながら、今月8日、本体工事に着手しました。江戸川区でなされた「スーパー堤防事業」でも、丁寧な話し合いを続けると言っていた江戸川区が2014年、区画整理事業の強制力を行使して直接施行に及んだという暴挙がありました。

行政は何十年も前の計画に縛られることなく、今を生きる住民と丁寧な話し合いを重ねながら、真になすべき対策やまちづくりをともに進めるべき。

そして司法は、市民の切なる思いを受け止め、政府や行政におもねることなく、独立した立場を最大限発揮し、公正な判断を示してほしいと思います。