荒川下流・高さ不足橋梁部の嵩上げを!~京成本線・四ツ木橋・西新井橋
河川の水があふれる外水氾濫の場合、堤防の高さが不足している箇所から水が入り、市街地に大きな被害をもたらします。
2019年10月に発生した台風19号は、多摩川流域でも浸水被害が発生。堤防未整備区間から水があふれ出ました。現在、関係機関が連携し「多摩川緊急治水対策プロジェクト」が進められています。
一方、同じく都内を流れる荒川では、橋梁の高さが不足する箇所が4ヶ所もあることがわかっており、速やかな対応が求められるところです。とりわけ荒川下流部には「ゼロメートル地帯」と呼ばれる低地が広がるため、堤防高そのものは十分な高さが確保されているものの、橋梁のところで極めて低くなっていることはあまり知られていません。
荒川下流部については「荒川下流河川維持管理計画」に橋梁の高さは概ね図示されていましたが、高さのデータは示されていませんでした。そこで、「スーパー堤防問題」にも取り組まれてきた水源開発問題全国連絡会共同代表の嶋津暉之さんが、国交省関東地方整備局に情報開示請求され、その数字が公開されました。
以下は、「橋梁地点の高さ」と「計画高水位」の差を出したものです。
●葛西橋 6.376-3.638 =2.738m
●小松川橋 8.48-4.342 =4.138m
●平井大橋 7.211-4.65 =2.561m
●四ツ木橋 5.78-5.194 =0.586m
●西新井橋 7.44-6.258 =1.182m
●京成本線 5.7-5.574 =0.126m
●JR東北本線 10.87-8.774 =2.096m
差が小さく、余裕がない方から並べると、京成本線 四ツ木橋、西新井橋、JR東北本線になります。このうち京成本線の橋梁は、周辺堤防より3.7mも低いことから嵩上げの工事「荒川下流特定構造物改築事業(京成本線荒川橋梁架替)」が始まろうとしていますが、他の3カ所はこうした計画が示されていません。
専門家の解析により、荒川では既述の台風19号で決壊の可能性があったこともわかっており、国は荒川が氾濫した場合、特に江東5区では深刻な浸水被害が広がると試算しています。氾濫の可能性が高いことを肝に銘じ、現実的な対策を講じることが不可欠です。
堤防高として確保すべき余裕高は、荒川下流部では2m~2.5mが多くなっています。京成本線だけではなく、四ツ木橋、西新井橋の嵩上げを急がなければなりません。
洪水を前提に「ここにいてはダメです」「浸水のおそれがないその他の地域へ」と区民を誘導する江戸川区にとって、巨費を投じ長大な時間をかけて部分的にスーパー堤防をつくるより、橋梁嵩上げのほうがよっぽど流域市民の安全に寄与する方策ではないかと考えます。
*全国の「緊急治水対策プロジェクト」はこちらから。