江戸川区「実は水害に強い」をアピール、なぜ?~「ここにいてはダメ」から一転

・江戸川区は江戸川、荒川、東京湾に囲まれ、陸域の70%が満潮時の水面より低い土地=ゼロメートル地帯であるため、巨大台風や大雨により、区のほとんどが浸水する。

・群馬や栃木に降った雨のほとんどは利根川に流れ、その1/3程度が江戸川に流れる。埼玉に降った雨の半分以上が荒川を通じて江戸川区に集まる。

・荒川や江戸川の氾濫、高潮の発生により、2週間以上浸水するところがある。

こうした状況にあるという江戸川区は2019年、11年ぶりに改訂した「江戸川区水害ハザードマップ」で、「ここにいてはダメです」と区民に呼びかけ、このキャッチコピーがセンセーショナルだと話題になったことをご記憶の方も多いことでしょう。

ところが、本年8月1日付「広報えどがわ」は、「実は水害に強い江戸川区!」と真逆のアピールをしたのですからオドロキです。

・70年以上、区内では川や海からの外水氾濫が起きていません。

・バケツをひっくり返したような雨が降っても大丈夫!

と、これまでの不安をあおるパターンとは異なるトーンのオンパレード。

さて、そのココロは? 人口減少に歯止めをかけるため?

今後は「滝のような雨」に備える下水道整備や、建物群による「高台まちづくり」を進めて浸水時の安全避難を確保するのだそう。どちらも大事な取り組みでしょうが、建物群による「高台まちづくり」は相応の時間がかかり、69万人が暮らす約50km2のわずか3ヶ所、しかも図のとおりの狭小スペース。どれほどの効果が見込めるのでしょうか。

そして、最後に付け足しのように表記された篠崎地区と中川左岸の「高台まちづくり」は高規格堤防(スーパー堤防)事業そのもの。2006年には「江戸川区スーパー堤防整備方針」を策定し、江戸川区を洪水から守る切り札とされてきたスーパー堤防の「ス」の字も高規格の「コ」の字もありません。事業の内容にも何ひとつ触れないままです。区報の水害特集にありながら、今なお江戸川区議会を二分するほどの本事業は、耳障りのいい「高台まちづくり」にすっぽりと吸収され、事業名はあえて伏せられているかのようです。

*「高台まちづくり」モデル地区については「災害に強い首都『東京』形成ビジョン」概要版(P3)からどうぞ。

都内で初めて「気候変動適応センター」を設置し、気候変動の影響に関する情報の収集、整理・分析をしているという江戸川区が、この期に及んで「70年以上外水氾濫は起きていない」と過去のことに胸を張るのもフシギです。