司法は「現実の世界」を見極めてください~鬼怒川大水害訴訟控訴審③
原告団共同代表・片倉一美さんは、「現実の世界」の実例を数々上げたあと、最後に、
・実際の現場【=水害発生箇所】、現物【=実際の堤防】を見て、現実【=堤防高の低い箇所から氾濫発生】を正確に認識して、初めて正しい判断ができる
・「架空」の世界から導かれた結果【=スライドダウン評価からの治水安全度】で、現実の世界の対応【=堤防整備の順番を決める】をすることは、間違った結果【=最も危険な箇所の堤防整備を後回しにして水害発生】になる
と総括し、「ダムを優先し、堤防整備をおろそかにしてきたことが現代日本の河川行政の実態」「気候変動で水害は増大するばかりであり、現在の河川行政では国民の生命・財産は脅かされ続ける」と指摘。
「そして司法はそれを追認。国民はそれを知らない」とし、
「司法は行政が行っていること、現実の世界を見極めてください」
「国民の立場で考えてください。国民の生命・財産を守ってください。真の三権分立に目覚めてください」
「40年前の環境での判例は古い。真に国民のための【鬼怒川判例】をつくってください」
と訴えました。
片倉さんの陳述のあと、只野靖代理人からも改めて「スライドダウン評価」について、補足資料を示しつつ「『架空』の堤防を前提とする改修計画は、格別不合理である」との主張がなされました。
場所を衆議院第二議員会館に移した報告集会では、国のプレゼンテーションについて、弁護団から「こちらが国を追い込んでいるからではないか」との認識が示されました。
記者会見を終えて到着された片倉さんは「国は危険なところをほっぽって安全なところを改修している。だから全国で同じ水害が毎年起きている。低いところを改修すれば助かる人が全国にたくさんいる。メディアにもアピールしてほしいと伝えた」と話されました。
当日は現地から原告や支援者のみなさんがバスを仕立てて駆け付けられました。その中には、本裁判を支える会共同代表で、4月に逝去された石崎勝義さん(元建設省土木研究所次長)の奥様もいらっしゃいました。
報告集会では、石崎さんから「この裁判は最高裁までいくだろう。最後まで関われない自分に代わって見届けてほしい」と言われていたこと、そして大東水害訴訟最高裁判例について「この違法性を訴えなければ。がんばってほしい。」との強い思いが語られました。
報告集会では、石崎さん、そして全国各地の水問題に取り組まれ、本裁判にも石崎さんとご一緒に献身的に尽くされた嶋津暉之さん(元東京都環境科学研究所勤務)のお二人をしのび、全員で黙とうを捧げました。
水害被害者の方々はもちろんのこと、お二人にもいい報告ができますことを祈らずにいられません。
次回は、11月11日(月)13時30分 東京高裁101号法廷 にて。結審の可能性もあるとのことです。
*2016年「江戸川防災勉強会」での石崎勝義さんのご講演内容はこちら→「鬼怒川決壊に学ぶ~あるべき安全な堤防」
*2021年「江戸川区スーパー堤防裁判報告集会」での嶋津暉之さんのご講演内容はこちら→「スーパー堤防事業の虚構と進めるべき治水行政」