血も涙もない国の尋問~鬼怒川大水害訴訟控訴審結審①
11日、13時30分から東京高等裁判所101号法廷にて「鬼怒川大水害国家賠償請求事件」控訴審(中村也寸志裁判長)第2回口頭弁論が開かれ、傍聴しました。住民、国双方から控訴された本件、住民側控訴人席には16人、国側には11人が着席。傍聴者は40名ほどでした。
今回は、一審では入院中につき法廷に立てなかった控訴人の証人尋問がなされ、弁論集結。結審となりました。
控訴人は当時、常総市内で縫製業を営んでおり、全国からの受注品の製造に追われる中、その職場が水害に見舞われました。
まず、被害状況について訂正申立書が出されたことに関し、住民側代理人の問いに答える形で、改めてその時の状況が語られました。
「水害当日は夕方5時頃、事務所後方から水が入ってきた。危ないと思い、事務所のモノを上に移してから徒歩と車で帰ったが、やはり気になり、8時頃見に戻ったが奥までは行けなかった。翌日の午前中に事務所に入ったところ、水は引いていたが、モノはかなり移動しており、掛かっていたカレンダーに残っていた水の跡は高さ2m近かった。逃げ遅れたとしたら、泳ぎも得意ではなく、命の危険があったと感じた。」 そのカレンダーの写真は法廷で直接裁判長に提示されました。
親族、友人などの協力を得て、何とか片づけられたのは3ヶ月後。品物を待ってくれているお客様のために住まいに近いところで事業を再開しましたが、工場規模は1/3ほどに縮小したといいます。
「管理なさっている国交省がもう少し気を使っていただければ。リビングや寝室が汚水にまみれ、木の枝などが入ってくる。そういう思いをしたことはないだろうが私たちは経験した。被害にあったのに補償問題はまだ片付いていない。いい結果をいただけるよう、よろしくお願いします」と結ばれました。
次いで、国側からの尋問がなされましたが、塗炭の苦しみを味わわされた水害被害者に対して、その態度はあまりにも不遜であり、尋問の内容も「事業用被害品はすべて再購入したのか」「その領収書はあるか」など、結審を前に聞くべきことかと思うほど些末なものでした。
書面上の「再取得価格」という項目に基づく質問のようでしたが、これについては、最後に住民側代理人が「再取得価格」とは被害品を再度買ったとした場合の額である、と改めて説明することに。つまり実際に再購入はしていないということになります。
国を相手取る裁判は、法務省に在籍する訟務検事という方々が国の代理人になるとのことで、法務省HPにも紹介されていますが、目の当たりにしたのはそこに書かれた内容とはほど遠い姿のように感じられました。
閉廷後の報告集会では参加者から「重箱のスミをつつくような非情な聞き方。反物やミシン、裁断機など商売道具をなくした市民の気持ちを想像する力がないものか。国は一円たりとも出したくないのか。血も涙もない尋問だった」との意見も出されました。
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