全国を元気にする判決を~鬼怒川大水害訴訟控訴審結審②

結審後、参議院議員会館で開かれた裁判報告集会では、まず弁護団の坂本代理人からお話がありました。

「令和4年7月22日の原判決から約2年半が経った。高裁は1回で結審し、半年で終わるのが普通。しかし、今回は期日が2回あり、この間6回の弁論準備が持たれた。一審では基本、各世帯1人が本人尋問に立ったが、入院中でできなかった控訴人の尋問を(裁判所が)採用した。あえてやったのは水海道の被害についても考えているからか。裁判長は丁寧に聴いていた。上三坂地区でも賠償が認められて当然だ」

また、国の尋問については「国の代理人は弁護士ではなく訟務検事。3年ほどで裁判所に戻り裁判官となる。しかし、しょうもない質問ばかりしていた。『ガス台』を『ガス代』と間違って表記していたが、書類を読めば単なる誤字とわかるはず。『再取得価格』に関してもとんちんかんな質問だった」とし、「全国に元気を与えられる判決に」と結ばれました。

会場からも国の尋問について「賠償金については細かく書いて提出している。それを見ればちゃんとわかると思う」。また「何時頃何cmの水が来たなどどうすればわかるか。色でも付けて流してほしいと思うほどだ」とも。

記者会見を終えた原告団長の片倉一美さんは一審12回、二審2回の裁判を振り返り「最初は自然災害のようだが、よく知れば人災。日本全国にたくさんの被害者がおられるが、国の責任はどこにも出てこない。国がきちっと治水行政をやってくれていたら、たとえば全国に水害が10件あるとしたら2~3件では救われた国民がいるのだと感じた」と語りました。

弁護団からは「都合の悪い事実には沈黙し、都合のいいことは書き連ねて述べるのが国の裁判の姿勢。裁判所はそれを判決に書く。(国が)反論しなかったことはなかったことになる。それくらい裁判所をなめているということ」とも。

特別国会から駆け付けた山添拓参議院議員は「安全を確保すべきとされていたところ、上三坂についてやらずにいる理屈は何なのか。国会でも答弁させる。この論戦を河川行政に活かすことができるようにしていきたい。気候変動により毎年起きている被害をどれだけ緩和するか、どう集中的に取り組むかが問われている」と述べたあと「スーパー堤防事業」に言及。「このままでは完成までに9百何十年かかる。どんどん延びている。政治の姿勢を正していけるよう臨んでいく」と力強く話されました。

参加者からも、元日から二度にわたり甚大な被害に見舞われた能登の水害について「中小河川が多いのに土手らしいものがない。危ないと指定されたところに住宅を建てている。川底を掘るとか幅を広げるとか、盛り上げてシートで覆うことくらいはせめてできるのではないか。命と暮らしを守る減災を」「二重災害、人災をなくし、住み続けたいと思う人が住み続けられるように」との声が上がりました。

最後に片倉さんから「生命・財産を守ると言うが、真剣にそう思っているのか。三権は本当に仕事をしているのか。意識改革をしてもらわないといけない」と。そして、この期日の2週間前に急逝された「鬼怒川水害裁判を支える会」事務局長の染谷修司さんについて「支える会をつくってくれ、被害者が困ったことを1つでも2つでも解決していこうとしてくださった」と在りし日を偲びました。

判決は、2025年2月26日(水)14:00 東京高裁101号法廷 にて言い渡されます。

良心に従い、独立して職権を行う。裁判官の真骨頂を目の当たりにできますよう。

スーパー堤防問題に取り組むメンバーも5名参加。染谷修司さんに黙とうを捧げる時間ももたれました。

当日の記者会見も含め、フリージャーナリスト・まさのあつこさんが本件をレポートされています。こちらからどうぞ。