ムダなダムの再評価は正当になされているか?~「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」が国交省ヒアリング①

公共事業改革市民会議は、全国で行われている不要な公共事業の見直しを求めて活動していますが、これら事業の根拠となる法律の成立また改廃を決める国会議員との連携は極めて重要です。

この間、国会超党派の「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」(会長は篠原孝衆議院議員)との協議を重ね、同議連の主催で今月2回の国交省ヒアリングを行うことになりました。

1回目は4日(木)夕方、参議院議員会館会議室で行われました。

テーマは「石木ダム」「川辺川ダム」について。

地元で反対を訴える住民代表の方や、住民に寄り添い支える国会議員、専門家に加え、国交省からは水管理国土保全局企画専門官や係長3名が出席されました。

会場の関係で市民はオンライン視聴となりました。私のメモから概要をご紹介します。

篠原会長のご挨拶のあと、「石木ダム」問題では水没予定地にお住いの岩下和雄さんから「昭和46年、町を通じて予備調査の依頼があったが応じると進むと反対してきた。当時の県知事は『1人でも反対するならダムはつくらない』と言ったのにおかしい。当時、水不足のダムだと言われていたが、今は必要ない。地元の意見をもっと聞いてぜひ見直してほしい。県は代執行すると脅している。県の役職にあなたたち(国)の上役を配置した。私たちは動かない。今中止しても誰も困らない。困るのは長崎県の政治家だけだ」と心境が吐露されました。

「石木川・守り隊」のHPはこちらから。

次に支援者の立場で、「市民による石木ダム再評価監視委員会」副委員長で、元国土交通省河川局防災課長や淀川河川事務所長などを歴任され、28年間同省に勤務された宮本博司さんから、事業再評価について問題提起がなされました。

まず、国交省の再評価実施要領に基づき、本省は長崎県から報告された内容について、チェックしたうえで対応し、補助金を付けていることを確認。

「昨年、再評価をしたが、たとえば費用対効果分析、石木川合流後の下流部は1/100、上流は1/30対応であり、流域全体に100年に1回の雨が降ったとき、上流で溢れることが県の作成資料からわかる。つまり1400㌧は流れない。上流の氾濫により溢れた分を考慮して下流に流れる流量を計算することになっているが、県は計算していないと言っている。これは基本的なミス。しかしこれが再評価の資料として本省まで上がっている。本省ではチェックしないのか」と質問されました。

「適切な手続きのもとなされている」「細かい具体の内容について詳細には見ていない」などの答弁に終始する国交省に対し、宮本さんは、

「私がいた時は、県が作った計画を本省としてこと細かくチェックし、もし違っていたら差し戻してつくり直してもらうことをやってきたが、今は言われたままによしとして予算を付けるということなのか」

「河川整備計画や費用分析が間違っていることが発覚した場合、補助金を出す本省はどう対応するのか」と再質問。

「仮定の質問には・・」と言う国に対し、「我々がおかしいと言って、県も(計算していないと)認めている。議事録も音声データもある。仮定の話ではない。それを根拠に事業継続となっている。それなのに手続きを踏んでいるから本省は関知しないというのはおかしな話」と指摘。

「事実が発覚したら本省は県に対して見直しを求めるなど何らか指導するべき。補助金を出しているのだから、それがまともに使われるのかどうか。まさに公共事業のチェックだ。もともと再評価制度はそういうことから始めたもの。再評価手続きを踏んでいるから中身のチェックをしないというのでは、再評価制度そのものが全く無意味。建前だけの話になっている」と断じました。

そして「県とのやり取りを知らない」「こういった事例について勉強不足」と言う国が、長崎県当局に一連のことをまず確認することになりました。

後半は再評価の運用についても言及。「事業全体のB/Cと残事業のB/Cがともに『1』を上回るべき」と主張。全体としては小さくても残事業が1以上であれば継続することについて質疑がなされ、B/Cに関する会計検査院の意見を紹介しつつ、「B/Cが適切になされることがダム事業継続か中止かの重要な問題」と指摘されました。

「川辺川」問題については「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」事務局長で、2020年7月球磨川豪雨災害で被災された木本雅巳さんから「命を守るために川辺川に治水ダムは必要か?」をテーマに、球磨川豪雨災害の被害検証が極めてずさんであること、ダムによる治水効果が誇張されていること、ダムの費用対効果について、同会が丁寧に行った実態調査データも含め、問題提起されました。

事前提出した質問への国交省回答を受け、嘉田由紀子参議院議員(議連会長代理)、山崎誠衆議院議員(議連幹事)、仁比聡平参議院議員が質疑及び意見を述べられました。他に、河村たかし衆議院議員、山田勝彦衆議院議員(議連事務局長)、大河原雅子衆議院議員(議連幹事)が参加されました。

フリージャーナリストのまさのあつこさんが、会場で取材され、動画配信されています。

元国交省の宮本さんが事実に基づき、現国交省に理路整然と斬り込む姿勢、また、議員の質疑や意見、そして木本さんが説明に用いたわかりやすい図表もはっきりと見ることができます。

こちらからぜひご覧ください。

次回は、12月9日(火)16:30~18:00  参議院議員会館101大会議室 にて、「善福寺川」「外環道」をテーマに行われます。入館証配布は16:15からです。

●16:30〜17:15 善福寺川ヒアリング
●17:15〜18:00 外環道ヒアリング

どうぞご参加ください。