次に制定したのが豊島区。2011年12月議会全会一致可決、2012年4月施行。都における豊島区の人口割合は2%ですが、暴力団員の割合は10%に及び、日本有数の繁華街かつ暴力団格好のターゲットとも言われる池袋を抱えます。豊島区条例最大の特徴は「虚偽の養子縁組予防」を全国で初めて盛り込んだこと。2010年のデータによると、養子縁組で入手した預金通帳を悪用した振り込め詐欺などが区内で少なくとも2件発生。現行の戸籍法では、養子縁組の申請者による届け出の形式が整っていれば、たとえ疑念があっても、自治体の窓口では受理せざるを得ませんでした。本条例施行により、申請者が短期間で何度も養子縁組をしたり、年齢が近いのに親子関係を結ぶなど、不自然な点があった場合には、警察に相談できる、としています。豊島区の場合、WHOが推進する「セーフコミュニティ」としての国際認証を受けたい意向があり、本条例制定はその前提条件を整えるためにも必要との判断がありました。結果、本年5月、同区は日本で5番目、都内では初の認証を受けています。
こうした中、江戸川区条例の審査では、暴力団による犯罪が今どれほどあるのか、という問いに、「そういうデータは持ちえない」との答弁。区と警察の間ではこの期に及んでもこの程度の情報共有もされていません。さらには、暴力団の検挙に住民をまきこみながら、通報者や協力者など、区民の安全を担保する条文もありません。愛知県弁護士会民事介入暴力対策特別委員会は、愛知県議会に対し、「暴力団による被害者に対するつきまとい、連絡等を禁止する接近禁止措置を定めるべき」との意見を提出しています。
警察対暴力団から社会対暴力団への転換は、逆に住民のリスクを高めることになるのでは? そもそも日本国憲法は、何人にも基本的人権を保障していますが、こうした条例は最も大事なこの点に反する懸念がありはしないでしょうか? 暴力団が暴力団であることをわかりにくくするよう工夫することで、住民との間に新たな混乱を招くことになりはしないでしょうか?
今は各地で夏祭り真っ盛りですが、この条例制定により、お祭りの主催者には、暴力団及びその関係者の排除が求められています。毎年都立公園内でお祭りをする区内の町会が本条例を受けて「無許可店舗禁止」の立て看板を事前につくり告知をすることに。そこで、代表者が公園管理者である東京都公園協会に出向き、東京都も看板に名を連ねてほしい、と要望したところ断られ、看板は江戸川区と地元警察署と祭実行委員会、三者の名前のみに。都は、こういうことには関わり合いになりたくないようだった、といいます。
江戸川区が関わる祭やイベントでも、一切排除した祭もあれば、そうでない祭もあります。条例はつくったけれど、その機能性は?どうもハナシが違います。